『源氏物語』の生田斗真がオンナの怖さを感じる瞬間とは?

インタビュー

『源氏物語』の生田斗真がオンナの怖さを感じる瞬間とは?

絶世の美男と謳われた光源氏をめぐる愛のドラマと、その作者である紫式部の恋を交錯させ「源氏物語」誕生の秘密に迫る『源氏物語 千年の謎』(12月10日公開)がいよいよ公開を迎える。そこで物語の主人公・光源氏を演じた生田斗真にインタビュー。源氏物語の魅力についてたっぷりと語ってもらった。

「源氏物語」といえば、一条天皇の中宮・彰子に仕えた紫式部が平安時代に執筆した日本最古の恋愛小説。生田斗真も、その世界を体感したことで改めて「古典の面白さを感じた」と明かす。「千年も前に書かれた物語なのに、現在なお多くのファンがいて映画になる。しかもシェイクスピアよりもずっとずっと前に描かれた物語。それが他国ではなく、自分たちの国にあるってことが嬉しいですし、日本が誇るべき文化だと思うので、是非世界の方々にも見てもらいたいです」。

そう笑顔で語る生田は、撮影前に諸々の所作をはじめ、舞踏や乗馬といった準備に多くの時間を割いた。そんな中、彼が光源氏の中に見出したキーワードが「ピュア」だ。稀有なプレイボーイとしての光源氏ではなく、愛を求めてさまよう幼子のような源氏像を作り上げた。「源氏の心の中には、いつも藤壺(義母)という女性がいて、映画ではその藤壺を含め、4人の女性たちと出会いと別れを繰り返すのですが、そこに描かれているのは源氏の青春時代なんです。だから、少し幼さの残る純粋さを前面に出して、母性に訴えかけようと思いました。大事にしたのは、どの女性にも嘘をつかない、媚びへつらわない、だけど来る者拒まず(笑)。その中で、源氏が抱えている痛みや哀しみを表現できたらと思っていました」。

雅楽の演目である青海波(せいがいは)を生田が踊るシーンも見どころ。尾上松也演じる頭の中将(源氏の親友)と息のあった舞を見せている。「源氏の目線の先には、常に藤壺がいて、彼女以外は目に入らない。藤壺のことを思って踊っていました。光源氏って、帝の子として生まれたのに(母である桐壺に後ろ盾がなかったため)どこにも居場所がないんです。なぜ、こんな所にいるんだろう。大人になんてなりたくなかったのに。そんな物悲しい気持ちを溜め込みながらやっていましたね」。

本作では、源氏が恋焦がれる義理の母・藤壺(真木よう子)、正妻の葵の上(多部未華子)、愛人となる夕顔(芦名星)、年上の未亡人・六条御息所(田中麗奈)と4人の女性が登場する。そこで生田に「自身はどの女性がタイプ?」と質問すると、「夕顔ですね。『あなたが誰であっても、私は一向に構わないんです』なんてセリフがあるんですけど、夕顔には源氏にはない懐の大きさがあるんです。短い時間だったけど、彼女と過ごした時間は本当に良い時間だったと思うし、真っ白な着物を着て、対になって寝ているんですけど、風の音しか聞こえないような静かなところで。神秘的な時間でした」と教えてくれた。

平安絵巻にふさわしい、きらびやかな世界の中で、現実と物語が交錯していく。そんな世界観を肌で感じた生田にとって、新鮮だったのは「御簾越しの演技」だという。「平安時代に生きる格式の高い女性たちは、顔を見せてはいけないから、御簾というすだれのようなものを隔てての演技が多いんですね。光の加減によっては、全く顔が見えないから、相手の表情が読み取れないし、距離感がつかめなくなるんです。だけど、普段なら聞き逃してしまうような息づかいや香りにものすごく敏感になる。これは初めての体験でした」。

愛にさまようゆえに、悲劇を起こしてしまう源氏。田中麗奈演じる六条御息所は源氏に嫉妬するあまり、源氏の愛する者に手をかけてしまう。そこで、生田に「オンナを怖いと感じる時は?」と聞くと、「女性が女性をほめる瞬間。女性どうしで『可愛いよねえー』なんて言ってるのを聞くと、『ホントにそう思ってるの?』って目を背けたくなる。男は正直ですから『監督、その革ジャン格好良いですねえ。くれないかなあ』なんて言いますけど(笑)」。

取材中、はっとするほど真剣な瞳でこちらを見据えて話していたかと思えば、次の瞬間「アハハハ」と笑う生田。このギャップに鶴橋康夫監督も、ぞっこんになったそう。そんな監督が最後に「この作品は若い人に見てほしい」とアピールする。『源氏物語 千年の謎』は鶴橋監督の描く美しい映像に加え、アクションにラブにホラー(?)とエンタテインメントの要素がたっぷり詰まった作品に仕上がっている。是非ともスクリーンでその世界を楽しんでもらいたい。【取材・文/大西愛】

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