吉高由里子、73歳・五十嵐信次郎の“三行革命”を笑って否定
ハイテクの二足歩行ロボットの正体は、73歳のおじいちゃん!? 『スウィングガールズ』(04)、『ハッピーフライト』(08)の矢口史靖監が放つ爆笑コメディ『ロボジー』(1月14日公開)で、映画初主演を果たしたのが、ロックンローラー、ミッキー・カーチスとして名を馳せる五十嵐信次郎だ。共演は『婚前特急』(11)でのコメディエンヌぶりも記憶に新しい吉高由里子。ふたりにインタビューし、撮影の苦労話や裏話などを聞いた。
家電メーカーの二足歩行ロボット“ニュー潮風”が、ロボット博の一週間前に大破。困ったロボット開発部の3人の社員は、ロボットの中に73歳の老人(五十嵐信次郎)を入れて出場させるが、ニュー潮風が予想外にブレイクしていく。吉高はロボットオタクの女子学生・佐々木葉子役に扮する。
五十嵐は、200人を超えるオーディションで主演の座を勝ち取ったシンデレラボーイだ。「いや、“シンデレラジジイ”です」とおちゃめに語る五十嵐は、もともと矢口史靖作品の大ファンだった。「矢口作品は全部見ていたので、ラッキーでした。しかもこの年で主演ってことで、過去をかなぐり捨て、全く新人のつもりでやりました」。たくさんのセリフを覚えるのに苦労したという五十嵐。「この年になると三行以上のセリフは無理。“三行革命”ですから(笑)」と言うと、吉高は「いや、セリフ、ちゃんと入ってましたよ。私なんて23歳ですが、二行以上は無理ですから。特に今回、専門用語が多かったのでお先真っ暗でした(笑)」とぼやく。
現場では、ダンディなミッキー・カーチスではなく俳優・五十嵐信次郎という別人格になると語る五十嵐。「人格を変えるのは得意なんです。過去を全部そぎ落とせるのが快感だし。お尻も見せていますが、あれは台本に書いてなくて、本番直前に監督から出してって言われたんです」。すると吉高が「いきなりですか? 事前にお手入れとかしたいですよね?」と突っ込むと、五十嵐は「しねえよ(笑)」と吹き出す。吉高は「綺麗なお尻で良かったです」と、ふたりは息の合った掛け合いを見せた。
70代とは思えないパワフルな五十嵐に、元気でいる秘訣を聞いてみた。「好き勝手やってるところじゃないかな。何でもやりたくなるし、失敗しても駄目でもともとだから、とりあえずやってみる。興味津々なんです。明日はどんな面白いことがあるんだろうって思うんですよ」。吉高は五十嵐について「ファンキーですね」と言った後で「すごくレディファーストで、何か選ぶ時は必ず先に選ばせてくれるし、ドアも開けてくださります」とジェントルマンぶりを絶賛。五十嵐いわく「俺は子供の時から、女の人にはとりあえず親切にって、親に言われてきたから」。
では、年を重ねることは楽しいことか?と尋ねると、彼は「もうあまり楽しくはないね」と本音を語った。「70くらいまでは『大人になってきたなあ』と思ったりはしたけど、最近は老いが加速するんだよ。今年74だから、80はすぐそこ。とりあえず、死ぬまでは生きるつもりだけど(笑)。最近は朝起きた時に、あ、起きた、生きてるって感じだね」。すると吉高から「いやいや。そんな人が携帯で、息を吹くと女の子のスカートがめくれるゲームなんてやらないですから」と突っ込まれ「止めろって」と苦笑い。
『ロボジー』では、ダンディないぶし銀オーラを封印して普通のおじいちゃんに成りきった五十嵐と、とこと弾けたコメディエンヌぶりを見せた吉高由里子。ふたりが個性を炸裂させた本作は、笑って感動できる新春のおすすめ映画だ。是非、矢口ワールドを楽しんで、笑顔で新春を過ごそう。【取材・文/山崎伸子】