着物で登場の小栗旬が「僕らの仕事は一寸先は闇」
役所広司と小栗旬が初共演を果たした『キツツキと雨』(2月11日公開)。本作の試写会に、役所や小栗をはじめ、古舘寛治、伊武雅刀が沖田監督と共に登場。観客からの質問に答えるという人生相談トークショーを繰り広げた。着物で現れた小栗は、「今年から舞台挨拶には着物で来ようかと思って」と話し、あふれる気合いを感じさせた。
まず、最初に挙がったのは「今まで好きな人を思って涙を流したことはありますか?」という20代女性からの質問。ガールズトークのような質問内容に、男性陣は戸惑いを隠せない様子だ。すると「泣けるうちはまだ良い!」と威勢の良い声を発したのは伊武雅刀。「俺の場合はその前に振られる」と話し、会場を笑いで包んだ。そして「次回作は恋愛映画だと聞いていますが?」と、沖田監督に無茶振り。これに対して監督は、「昨日、恋愛映画を見たんですが、一人で劇場でキュンキュンしてたんですけどね」と、特に回答はせず。「切ない涙を流したい」という質問者に対し、役所は「じゃあ、ひどい男につかまるんだな!」と大人の男らしいコメントを発した。小栗も「それが一番早い」と笑顔を見せた。唯一、古舘寛治だけが「怖がらないことですね。好きかどうかどっちだろうって思ったら、もう行くべき。それは若い時だからこそできる。だから、ゴーしろってことですね」と正統派のアドバイスを送った。これには役所も「さすがだね」と一言。
また、「映画に携わる仕事に就きたい」という38歳の男性会社員から、「妻子を養っているし、業界に強力なコネクションがあるわけでもないし、実現は難しい。自分が本当に好きなことを仕事にするためには、どんな努力が必要ですか?」という質問に、役所は「女房、子供が路頭に迷うことの覚悟がなければできないかもしれませんね。僕らは仕事がなかったら、ただの失業者ですからね。それはみんな覚悟している。趣味から始めてはいかがですか?」と現実的な答えを返した。小栗も「僕は家庭を持ったことがないし、人を養ったことがないのでわかりませんが、一寸先は闇なので、その覚悟を持ってやれるかということですかね」と、役所の意見に賛成した。
「やっちゃえば良いんじゃないですかね!」と一喝したのは監督。だが現在、エキストラ出演などを経験しているという質問者から、「見切れる役でも使ってください」と言われると、「なかなか見切れる役を指名はしないですね」と苦笑していた。そんな中、伊武は「俺は自分の立ち位置が大したところにいないという自覚がある。だからカミさんが何十年たっても全然尊敬してくれない。そういう仕事を私が選らんだというだけのことだけど。覚悟があるならやってみたら良いんじゃないですか」と話し、質問者を勇気づけた。観客からの人生相談に直接答えるという珍しい今回の試写会は、映画同様、温かな空気に包まれるイベントになった。
『南極料理人』(09)の沖田修一監督がメガホンをとった本作は、片田舎の60歳の木こりと、25歳の映画監督が出会い、互いの人生に刺激を与えていく。本作を見れば、映画撮影に沸き立つ村人たちの様子に心が温まると共に、人生のヒントが見つかるかもしれない。【取材・文/鈴木菜保美】