フィンチャー監督が『ベンジャミン・バトン〜』に惹かれた理由
今や時代を代表する監督となったデビッド・フィンチャー。2月7日公開の最新作『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は第81回アカデミー賞の13部門で最多ノミネートされ、まさに順風満帆だ。12年ぶりに来日した彼にインタビューを敢行した。
本作は、80歳で生まれ若返っていく不思議な一生を送った男のストーリーで、18年前から企画があったという。この設定だけでもどんな話なんだろうとワクワクするが、監督はいったいどの部分に惹かれたのだろうか?
監督「この話が気に入ったのは、いろいろな面を持っている話だったからなんだ。原作は特に“寂しい”と言うより、“皮肉”、ある意味“サディスティック”なくらいだと思う。正直言うと、2005年まで(原作を)読んでいなかったんだ。2005年にはすでに撮影を始めていたから、自分にとっては影響は受けてないよ」
確かに、映画はかなりの部分で脚色がなされていて、原作とは印象がだいぶ異なる。会見でも、「(主演のブラッド・ピットと)お互い話しながら時間をかけて人物像を練ることができた」と語っていたくらいだ。
監督「今回はいわゆる“ハリウッド的”ではなく、美しい2人のラブ・ストーリーでもないんだ。普通だったら、『いつになったら結ばれるの?』という感じで物語が進むけど、そうではない。自分としての興味は、この話はいろんな面を持っていて層に厚みがある、ということだったんだ」
監督の興味のポイントどおり、主人公のベンジャミンを取り巻く様々な人物の描写も緻密で、観客がそれぞれの人物の背景を感じ取れるようになっている。だからこそ、ベンジャミンの喜びと哀切を十分に感じる素晴らしい作品に仕上がったのだろう。【MovieWalker/堀田正幸】
■『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』は、2月7日(土)丸の内ピカデリー他全国ロードショー
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