瑛太や吉高由里子ら登壇、ヨコハマ映画祭授賞式。瑛太は原田芳雄に「ウィスキーの味が忘れられません」
“映画ファンのための映画祭”と人気を博す第33回ヨコハマ映画祭の授賞式が、2月5日に関内ホールで開催され、主演男優賞受賞の瑛太や、主演女優賞受賞の吉高由里子などの豪華ゲストが登壇。日本映画ベスト1となった『大鹿村騒動記』に主演した故・原田芳雄には、特別にヨコハマ映画祭最優秀男優賞が授与され、本作に出演した瑛太や阪本順治監督らの口から改めて、原田芳雄との撮影秘話や思い出話が語られた。
授賞式前に、原田芳雄主演作の『ツィゴイネルワイゼン』(80)と『鬼火』(63)の予告編が上映され、観客の拍手が鳴り響いた。『鬼火』の最後の「魂、鳴り止まず」というテロップも、観客の心に刺さったに違いない。父親の代わりに壇上に上がった娘で女優の原田麻由は「こんなにも原田芳雄に愛情を注いでいただき、ありがとうございます。芳雄は24時間映画のことが頭から離れることがなかったので、そういう面では心底役者だったと思います」とこみ上げる思いを語った。
これまで原田芳雄と7本の作品を手掛けてきた阪本順治監督は、涙を堪えながらコメント。「芳雄さんは、僕以上にこの映画を良いものにしようと、自分のシーン以外でもいろんな提案をしてくれました。強烈な向き合い方で、毎日ディスカッションをしました」。今回、『冷たい熱帯魚』で助演男優賞を受賞し、本作にも出演したでんでんは「原田さんの衣装がものすごく重くて。病気と闘って相当苦しかったと思うけど、僕らにはそんな素振りを全然見せなかったです」と撮影を振り返ると、瑛太も「僕の撮影期間は2、3日でしたが、すごく心に染みる時間を過ごさせていただきました。飲ませていただいたウィスキーの味が忘れられません」と語った。
瑛太は主演男優賞を受賞した『まほろ駅前多田便利軒』については、「大森監督には、いろんな芝居の嘘が見透かされました。本作で、俳優として次のステップに進む前の貴重な体験ができました」と真摯な表情でスピーチ。また、『婚前特急』で主演女優賞を受賞した吉高由里子は「ヨコハマ映画祭で初めて新人賞をいただいた時、ブーメランってことを仰っていただいて、ちゃんと戻れるかなと思っていましたが、こういう形で責任を果たさせていただいて、身に余る光栄でございます」と感激しながらコメント。『冷たい熱帯魚』で監督賞、助演男優賞、助演女優賞(2冠)合わせて4冠を獲得した園子温監督は「今年、黒沢あすかさん、でんでんさん、神楽坂恵さんのお三方と一緒に受賞できたことを、何て言って良いのかわからないほど感動しております」と喜びを口にした。
ヨコハマ映画祭の各賞は、今年も映画評論家や映画ライター、映画ファンなど35名の投票により選出されたが、今回の授賞式も映画愛に満ちあふれた内容となった。きっと原田芳雄も、天上で喜びの杯を交わしているに違いない。【取材・文/山崎伸子】
【第33回ヨコハマ映画祭 授賞結果】 ■作品賞:『大鹿村騒動記』阪本順治監督作 ■監督賞:園子温『冷たい熱帯魚』『恋の罪』 ■新人監督賞:砂田麻美『エンディングノート』、前田弘二『婚前特急』 ■脚本賞:渡辺あや『その街のこども 劇場版』※本人希望で辞退 ■撮影賞:藤澤順一『八日目の蝉』 ■主演男優賞:瑛太『まほろ駅前多田便利軒』 ■主演女優賞:吉高由里子『婚前特急』 ■助演男優賞:でんでん『冷たい熱帯魚』 ■助演女優賞:神楽坂恵『冷たい熱帯魚』『恋の罪』、黒沢あすか『冷たい熱帯魚』 ■最優秀新人賞:松坂桃李『僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia. 』『アントキノイノチ』、杉野希妃『歓待』、浜野謙太『婚前特急』 ★ヨコハマ映画祭最優秀男優賞:原田芳雄(日本映画とヨコハマ映画祭に忘れ得ぬ偉大な足跡を残した名優の名を、わが映画祭の永久欠番とするために―。)
日本映画ベストテン ■第1位『大鹿村騒動記』 ■第2位『冷たい熱帯魚』 ■第3位『八日目の蝉』 ■第4位『恋の罪』 ■第5位『一枚のハガキ』 ■第6位『アントキノイノチ』 ■第7位『モテキ』 ■第8位『婚前特急』 ■第9位『エンディングノート』 ■第10位『まほろ駅前多田便利軒』『その街のこども 劇場版』