『キツツキと雨』の役所広司と小栗旬が裸のつきあいを語る
朴とつな木こりと優柔不断な新人映画監督の交流を描いたハートフル・ムービー『キツツキと雨』(2月11日公開)で、初共演を果たした役所広司と小栗旬にインタビュー。文字通り裸のつきあいを経て、親子さながらの関係を育んだふたりに、作品の魅力や撮影秘話を語ってもらった。
『南極料理人』(09)で注目を集めた沖田修一監督のオリジナル脚本を映画化した本作は、ゾンビ映画を撮影するため人里離れた山村にやってきた新人映画監督の田辺幸一(小栗旬)らに出会った木こりの岸克彦(役所広司)が、ひょんなことから映画の撮影を手伝うこととなり、その面白さに目覚めていく物語。
プライベートでも山をこよなく愛する役所広司は、脚本を読み出演を快諾したという。「克彦は、女房を亡くして上手く息子と接することができない男で、たまたま出会った息子と同い年で同名の映画監督に息子を重ねながら応援していくんですけれども、僕も息子には克彦と同じようについ小言ばっかり言ってしまうんです。そういう気持ちを大事に、ことさらキャラクターを誇張しないように演じていました。チェーンソーは得意ですから大丈夫だったんですけれども、ユンボ(重機)の操縦が結構大変で随分練習しました」。そう本作の役作りを明かした役所は、劇中で見事なチェーンソー捌きを披露している。
一方、克彦と親子さながらの友情を結ぶ映画監督の幸一を演じたのは小栗旬。『シュアリー・サムデイ』(10)で監督経験も持つ彼だけに共感も多かった? と思いきや「台本を読んだ時は『この人絶対無理だよ監督』って思いました」と笑う。「でも、実際演じてみると、助監督経験もなくて覚えなきゃいけないことだらけの中で、多くの決断を迫られながらもやっている。今考えてみると『よく頑張ったな』って思います」と撮影を振り返り田辺監督を労う。続けて役所も「田辺監督は人に愛される素養を持っている。それはいちばん大切なことで監督の才能がある」と太鼓判を捺した。
さて、役所演じる克彦は、木こりという職業がら「空を見て天気がわかる」という特技がある。そこで役所に、役者を長年続ける中で培った特技を聞くと「撮影で雨が降ったりすると誰が雨男(雨女)かわかりますね」という答えが。ちなみに小栗は「(かつては)ものすごい雨男だった」とのこと。これが過去形か現在進行形かは神のみぞ知るところだが、役所はこう続ける。「たいていの役者は自分のことを晴男(晴女)だと思っていますけど、雨が降ると『(雨男は)あいつだ!』なんて言われてたりする。もちろん僕は晴男だと信じてますけどね(笑)」。
和やかに進行したインタビューの雰囲気そのまま、先行上映会の舞台挨拶でもほんわかムードを醸しだしていたふたり。劇中で一緒に露天風呂に入り、まさに裸のつきあいをした仲だけに、掛け合いのテンポも絶妙なのだが、この入浴シーンの裏には並々ならぬ苦労があったようで。小栗が「あのシーンは長野県で撮影しているんですけど、気温が0度で湯の外に出ると寒さでガタガタ震えるほどだったんです」と振り返ると、役所が「あの風呂は透明な湯だったので(見えちゃいけないものを隠すため)前張りをしていたんですけど、1分もしないうちに取れてしまって(苦笑)。そこからは、いかに見えないようにするかという戦いでもありました」というエピソードを披露し、会場の笑いを誘っていた。
最後に小栗が「僕は『名作に出させていただいた!』と思っているんですけど、個人的にも大好きな作品になりました。観ればきっと笑顔になれる作品だと思います」とアピールすれば、役所も「撮影中は本当に楽しくて、きっとこの楽しい雰囲気がフィルムにも焼きついていると信じています。ぜひ劇場で“一体感”を楽しんで下さい!」と笑顔で締めくくる『キツツキと雨』は、一足早い春の訪れを運んでくれる心温まる一作に仕上がっている。【取材・文/大西愛】