「高良健吾はどんどん変わっていく」。『キツツキと雨』の沖田修一監督、高良とさらなるタッグを希望

インタビュー

「高良健吾はどんどん変わっていく」。『キツツキと雨』の沖田修一監督、高良とさらなるタッグを希望

『南極料理人』(09)の沖田修一監督最新作『キツツキと雨』がいよいよ2月11日(土)に公開される。60歳の木こりと25歳の新人映画監督の心の交流を書いた本作には、沖田組常連となった高良健吾も出演。今回、そんな高良と沖田監督にインタビューを敢行。高良は役所広司と共演や沖田組ならではの雰囲気、そして沖田監督から見た俳優・高良健吾の魅力を教えてくれた。

今回、「高良くんが出てくれるなら出てほしいと思いました」と高良にラブコールを送った沖田監督。『南極料理人』に続いて沖田組に参加することになった高良は、「朝ドラ『おひさま』の撮影中だったので、スケジュール的には難しかったのですが、『沖田組なら行きたい!』と思い、色々調整していただいて参加しました。そうしたら撮影場所が岐阜の結構山の中で(笑)。でも楽しかったです」と道中を振り返り、監督も「ロケバスでスタッフと一緒に撮影場所まで来て、疲れてるだろうに」と多忙の中、出演してくれた高良に感謝の表情を浮かべた。

本作で高良が演じたのは、役所広司演じる克彦の息子・浩一だ。役所と初共演した感想は? 「黒沢清監督の作品が好きなので、よく出演されている役所さんも大好きな役者さんでした。同じ控室だったので緊張したんですけど、役所さんが『“おにいちゃんのハナビ”は素晴らしかったよ』って言ってくれたんです。すごく嬉しかったです。現場でも、受け止めてくれる人という印象でした。僕は演技をする時に、受けとか攻めとかあんまり考えたことがなかったのですが、“大きな心ってこういうことなのかな”と思いました」。

林業を営む克彦役を演じた役所について監督は、「役所さんが、チェーンソーが使えるという理由からキャスティングしました(笑)。克彦を役所さんが演じるってだけで面白いと思いました。木に登って、上にフレームアウトしていく役所さんなんて見たことないし、役所さん自身、克彦でいることを楽しんでくれていた。撮影が終わっても、もっと撮っていたいという気持ちにさせられました」と名優の演技に大満足だったようだ。劇中、そんな克彦の活躍もあって、映画の撮影隊は地元の人々から熱い協力を得て、撮影が進んで行くのだ。

この映画には、2人の“コウイチ”が登場する。1人は小栗旬演じる若手映画監督の幸一。そしてもう1人は克彦の息子・浩一だ。克彦と幸一は、お互いに刺激し合う、擬似親子のような関係。そして実の父子である克彦と浩一は、どこかぎこちないまま、2人暮らしを続けている。本作の脚本も手がけた監督は、「自分の息子と同じ名前で同じ年の幸一と出会ったことから、克彦が息子との付き合い方が変わっていくってことが面白いなと思った」と話し、高良は「たとえば、友達に言う『ありがとう』と、父親に言う『ありがとう』は違う。精一杯普通に感謝していても、なぜか照れてしまって目を見られない。父親も照れてる気がするし、父親と息子の関係って難しいです」と父子関係について語った。

最後に、監督から見た高良さんの魅力を聞いてみた。「高良くんもいろんな現場を経験してどんどん変わっていく。その中で、演じている自分自身に神経質だったり、まじめに考えたり、考えた末に良い加減にやってみたり。そういうところが魅力的で、またこれから先、次の現場でどういう役をどんなふうに演じていくのか楽しみです。『この人はこうだからこの役』とかって決めるのではなくて、また一から始めたいなと思える。そういう作品をまた高良くんとできたら良いなと思います」と、高良のさらなる飛躍に期待する言葉を送った。高良は「絶対に変わっていきます。変わることを否定してはいけない。監督によっても違うし、同じ監督の作品でも、演じる役が違ったら全然違う。最近、演技はそこが面白いと思っています」と、芝居へのあふれる情熱を感じさせてくれた。

親子の関係だけでなく、登場人物一人、一人の姿や生き方を絶妙なバランスで微笑ましいタッチで描く『キツツキと雨』。人々に対する沖田監督の愛情と、それに惹かれる役者たちが繰り広げる物語を、是非劇場のスクリーンで堪能してもらいたい。【取材・文/鈴木菜保美】

スタイリスト:澤田石和寛
衣装クレジット:McQ(M inc 03-3498-6633)
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