新人発掘眼に定評のあるスティーブン・ダルドリー監督、トーマス・ホーンの起用理由明かす
世界的ベストセラーとなっているジョナサン・サフラン・フォアの小説を映画化した『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2月18日公開)。本作のメガホンを取るのは、これまでに前3作品全てがアカデミー監督賞ノミネート、作品賞でも二度のノミネートと、実力者を発揮するスティーブン・ダルドリー監督だ。
スティーブン・ダルドリーは舞台と映画の両方で賞受賞経験を持つ監督でもある。ロンドンの劇場、ロイヤル・コートの芸術監督を務め、100本以上の舞台演出を手がけてきた実力派だ。映画監督デビュー作『リトル・ダンサー』(01)は世界中で40以上の賞を獲得し、最優秀監督賞を含む米アカデミー賞3部門にノミネート。2本目の『めぐりあう時間たち』(03)もまた、世界中で多くの賞を受賞し、作品賞を含む米アカデミー賞9部門にノミネート。前作『愛を読むひと』(09)では作品賞を含む米アカデミー賞5部門ノミネートだった。実は本作、2011-2012の賞レースが始まる以前は、数々の予想に挙げられていたが、製作が遅れたため、各賞の投票権を持つ会員に対し十分に作品を見せることができなかった。結果、アカデミー前哨戦と言われるゴールデングローブ賞をはじめとする各賞レースへ参加が出遅れてしまったという噂も流れている。しかし、本国アメリカでの2011年12月25日限定公開を皮切りに再度評価が高まり、先日、スティーブン・ダルドリー監督自身3作品連続となる、起死回生とも言える第84回アカデミー作品賞ノミネートを果たしたのだ。
本作の原作に強く心を動かされ、主人公オスカー少年の純粋な視点に心を奪われた監督は本作を描くうえで、“突然大事な人を失い、残された人々の心”をもっと知らなければならないという衝動に駆られたという。何人もの専門家、そして、9.11の犠牲者の遺族と友人が設立したNPO“チューズデーズ・チルドレン”の意見も聞き、「私は、親を亡くした子供たちに対応しているセラピストを含め、異なる分野の数多くの専門家の話を聞きました。オスカーのような子供たちが、9.11の後で、日々を、年月をどのように過ごしてきたかをより理解したかった。彼らの心がどのように癒されていったか、あるいは、時に未だ癒されていない場合もあるだろう。そういうことを学びながら、同時にエリック・ロスと脚本を練りあげていった。これは、オスカーが彼なりの方法で父の死を受けいれる旅を描いているんだ。でも観客がキャラクターの苦悩を追体験するだけではなく、違った意味でも共感できる意味のある作品になっている」と語っている。
その言葉を裏付けるかのようにキャスティングのエピソードでは、トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、ゾーイ・キャルドウェル、そして今回、アカデミー助演男優賞ノミネートのマックス・フォン・シドーなど、ベテラン勢は第一候補で、全員が快諾したという。トム・ハンクスは「僕にとってこの映画に出たいと思うのはごく当然だった。脚本を読み終わった瞬間に、出るか出ないかなんて考える必要さえなかったよ。スティーブンは真の意味で“共生”という技を持っている。彼はこの特別な映画の多様性を表現している。彼はとても優しくて、厳しい監督だよ(笑)」と語る。
新人発掘眼に定評のあるスティーブン・ダルドリー監督。『リトル・ダンサー』では当時全くの無名だった少年ジェイミー・ベルを起用。現在も第一線で活躍を続けるジェイミー・ベルは、スティーヴン・スピルバーグ監督『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』(11)でタンタンの声を演じ、また『愛を読むひと』で起用されたダフィット・クロスは『戦火の馬』(3月2日公開)に出演している。今回、公開するインタビュー映像では、つい先日に来日を果たしたばかりのトーマス・ホーン少年の起用理由を存分に語っているので、そちらもチェックしてもらいたい。【Movie Walker】