3Dから2Dへ! 世界最古の壁画を撮影した3Dドキュメンタリー映画がフィルム版で再登場
およそ3万2千年前に描かれた洞窟壁画を初めてカメラに収めたことで話題を呼んでいるドキュメンタリー映画『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』。人類最古の遺産に出会う興奮を3D映像の迫力と共に体験できる同作は、当初の予定を変更して上映期間が延長されるなど、大きな反響を呼んでいる作品だ。そんな反響に応え、このたび同作の35mmフィルム版が5月12日より上映されている。
本作は南仏のショーヴェ洞窟内で発見された世界最古の壁画に迫ったドキュメンタリーで、フランス政府によって研究者以外の立ち入りが厳重に禁止されていた洞窟の内部に、映画のカメラとして初めて足を踏み入れることに成功した作品。監督を務めたドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォークは、幼い頃に見たラスコー壁画の写真が自身の創作の原体験になったと語るだけに、この作品にかける意気込みは並々ならぬものだったようだ。そして今回、好評だった3D版に続いて公開されるのは、何と2Dの35mmフィルム版。『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス 3D』(公開中)や『タイタニック』(公開中)のように2D作品をデジタル3D化するのではなく、デジタル3Dとして上映されていた作品を新たに2D、しかもフィルムで上映することになる、全く真逆の試みだ。
監督自身のオリジナルナレーションが収録され、日本語字幕がついたこの35mmフィルム版の公開は、業界史上初の試みとしても注目されている。というのも、これまで同じ作品の2D版と3D版が並行して公開されることはあっても、デジタルマスターを新たに35mmフィルムにプリントして上映することは一度もなかったからだ。3D版では実際にショーヴェ洞窟の中に立っているような臨場感を体験することができるが、35mmフィルム版では、壁画自体の質感や色合いをより細かく、鮮明な画で観察できるようになっており、フィルムの長所が存分に活かされている。
2013年までには全国の映画館がデジタル化され、今後フィルムで映画を見る機会はますます少なくなると言われている昨今。『世界最古の洞窟壁画35mm 忘れられた夢の記憶』はそんな状況において、もう一度フィルム上映について考え直すチャンスを与えてくれた作品とも言えるだろう。既に3D版を見た人も、3Dが苦手でまだ見ていなかった人も、この機会に劇場で鑑賞してみてはいかがだろうか。【トライワークス】