ヴァル・キルマーが新作『The Fourth Dimension』で教祖に。ファットマンから復活まであと一歩!?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ヴァル・キルマーが新作『The Fourth Dimension』で教祖に。ファットマンから復活まであと一歩!?

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ヴァル・キルマーが新作『The Fourth Dimension』で教祖に。ファットマンから復活まであと一歩!?

続編製作が決定したトム・クルーズ主演の『トップガン』(86)ではトムのライバル役アイスマンを演じ、『バットマン・フォーエヴァー』(95)ではバットマン役を射止め、そして『ヒート』(95)ではあのロバート・デ・ニーロやアル・パチーノと男たちの熱いバトルを見せてくれた男、といえばヴァル・キルマーだ。

当時、美男子でクールなイメージで一世を風靡したヴァルは、私生活も順調で、1988年にロン・ハワード監督作『ウィロー』(88)で共演して恋に落ちた女優のジョアンヌ・ウォーリーと結婚。1991年には娘のメルセデスが、1995年には息子のジャックが誕生するが、翌年1996年に離婚。その後、もともと生まれ育ったニューメキシコの農場を購入したり、宿泊施設を経営するなど、我が道を歩み出したヴァルは、俳優活動は続けているものの、華やかだった当時を考えると、ハリウッドの一線から退いてしまった感が強い。

そんなヴァルも、今後は7本の出演作の公開や製作が控えているというが、その1本の『The Fourth Dimension』がトライベッカ映画祭で披露された。それぞれ別の監督がメガホンを取る3部作からなるオムニバス形式の第1章「The Lotus Community Workshop」でメガホンを取るのが、『ガンモ』(97)で独特の世界を繰り広げて話題となったハーモニー・コリン。ヴァルは本人役で活動家に扮している。

3作で共通するテーマ“Fourth Dimension(四次元空間)”について、自分たちが幸せを感じることができる世界に進むべく、ロータスコミュニティーに集まった人々を前に、教祖様のような存在として教えを説くヴァル。これはドキュメンタリー映画ではないのだが、ヴァルがヴァル本人を演じているという前提と、「みんな、僕のことは映画スターとして知っているだろうけれど、もう終わったことなんだ。自分が一番快適な場所を見つけたんだ」というセリフなどを聞くにつけても、これはヴァルそのものではないか、と勘違いしてしまいそうだ。

しかし、「ハーモニーが考えた脚本を僕が演じたという感じなんだ。だから、これが僕そのものの思想だったりするわけではないよ。変なことばっかり皆に説いているから(宇宙船、エイリアン、綿菓子などが連発)、ハリウッドでの役者生命が危なくなるかもしれないけれど(笑)。ハーモニーとはいつか仕事をしたいと思っていたし、話をもらってとても嬉しかった。『There is nothing either good or bad , but thinking makes it so.』っていうシェイクスピアのセリフを引用したのは僕だけどね」と語ってくれたヴァル。ヴァル本人であっても、これはあくまでフィクションだという。

かつて『ドアーズ』(91)でジム・モリソンを演じたヴァルは、入念なリサーチをすることで有名だが、人々に教えを説く活動家としてしての役作りについてどのような準備をしたのだろうか?

「皆の前で一人浮いちゃうのはまずいと思ったんだ。リズムが大事だから、まずは自分でしゃべったり、一人芝居をした声をテープに吹き込んで、何度もそれを聞いたりした。そしてセリフを吹き込んだものをハーモニーに送ったら、バッチリだと言ってくれたんだ。周囲には僕よりいっぱい賢い人たちがいて、いろんなことを教えてくれるから、誰か特定の活動家を支持しているということはないんだ。実際に一部の活動家のしゃべり方を見て参考にもしたけれど、どちらかというと、彼ら特有の声の出し方とかトーンを学ぶために、ボイスコーチからレッスンを受けたんだ」。

ハーモニー監督とヴァルのコンビが放つ異色の作品とも言える同作では、「とにかく製作中も楽しくて、撮影前にあまり笑いすぎないように、というのがハーモニー監督からの注文だった」と笑うヴァル。役者を楽しんでいるように見えるが、以前、大作から姿を消した際に、「お金のために仕事をしていた」と語り、実際にニューメキシコで牧場を営んでいた過去や、セリフの中の映画俳優終了宣言とも取れる発言は、どうしてもヴァル本人とオーバーラップしてしまう。

しかし「子供が小さかった時は、彼らは僕を必要としていたんだ。だから、できるだけ子供と一緒に過ごすことを大切にしたかったんだよ。でも、もう彼らは僕を必要としない年齢(20歳と16歳)になったからね」と語ってくれたヴァル。今後の待機作を見るにつけても、復活の準備は万端のようだ。

なかでも、ヴァルが監督とプロデュース、主演を兼ねる作品で、「トム・ソーヤの冒険」で知られる作家マーク・トウェインに扮する『Mark Twain and Mary Baker Eddy』(全米2013年公開予定)は、大きな話題になりそうだ。すっかりマークに傾倒しているヴァルは、3月末には12日間限定で、ロサンゼルスで「Citizen Twain」の一人舞台を踏んでおり、映画化にもこぎつけた。まだ同作の情報についてはあまりおおっぴらにはできないそうだが、「エミリー・ブラントが出演することになったおかげで資金が集まった」との情報もあり、何かが確実に動き出しているようだ。

昨年、フランシス・フォード・コッポラ作『Twixt』(12)のプロモーションで久々にメディアに姿を現した際には、すっかり太ってしまったことでファンをがっかりさせたヴァルは、メディアにも「バットマンがファットマンに!」などと書きたてられたが、レッドカーペットにはメディアが殺到し、未だに注目度は抜群だ。

ファンも含めてヴァルの復活を望む声が多いことを伝えると、「温かい言葉をありがとう!」と嬉しそうに答えたくれたヴァル。自分なりの“綿菓子”のような心地良い世界を見つけたヴァルが、今後、ビッグスクリーンに戻ってくるのかはわからないが、ちょっとダイエットすればまだまだいけるはずだ。昨年、『トップガン』の相棒だったトム・クルーズが復活劇を果たしたように、ヴァルにももう一旗挙げてほしいものだ。【取材・文/JUNKO】

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