17匹の猫と共演した市川実日子、元気の源は「人とご飯を食べること」

インタビュー

17匹の猫と共演した市川実日子、元気の源は「人とご飯を食べること」

『かもめ食堂』(06)など、ゆるりと流れる時間の中に人と人のつながりや、細やかな心の機微を描く独特の世界観で人気の荻上直子監督。最新作『レンタネコ』(5月12日公開)では、孤独を抱えた人と猫との出会いを助ける女性サヨコのおかしくも温かな日常を映し出す。そこでサヨコ役をコミカルに演じた市川実日子にインタビュー! 「一度も猫を飼ったことがないんです」という彼女に、たくさんの猫たちに囲まれた撮影エピソードから、元気の源までを聞いた。

完成した映画の感想を聞くと、「猫が猫らしく、自由に動いていて! すごく生き生きと映っていたので嬉しくなりました」と微笑んだ。その鍵は大の猫好きでもある、監督のこだわりにあったと続ける。「撮影前に監督から『猫に何か強要することはせず、自由にしてもらいながら撮影を進めたい』と話があって、その言葉通りに撮っていったんです。『よーい、スタート!』と声がかかった瞬間に逃げていく子もいれば、猫パンチを始める子もいて(笑)。色々な性格の猫がいるんだなと思いました」。

猫と生活することで、孤独を癒していく登場人物たち。「猫の内側、首からお腹の辺りを触るとすごく気持ち良いんです。見ているだけでも『ああ、良いわぁ』って思う。撮影中にすごく和やかになれたのは、やっぱり猫がいたからかもしれません。みんながこっそり、『ちょっと触って良い?』って、猫に会いに行っていたと思います」と、自らも猫の魅力を存分に楽しんだようだ。

演じたサヨコ役について、監督からはどんな指示があったのだろう。「監督は私の過去作をご覧になって、『市川さんが変だった』って言うんです。『年齢的にも、大人になる一歩手前の女性を演じられるギリギリの時じゃないかと思うので、その変な感じを見せてください』と言われて。でも“変”を意識しすぎると、ただの変な人になっちゃうので、監督の言わんとすることを咀嚼して演じました」と明かす。

なるほど、サヨコはしがらみの多い現代の中で、ひょうひょうと突き進む少年のようにも映る。しかし、自身はサヨコの中にも孤独を感じたという。「不器用そうな人だなあと思ったんです。サヨコ自身、小さい頃から心に穴ぼこが空いている子。だからこそ、心に穴ぼこが空いている人を見つけるアンテナが鋭いんじゃないかな。サヨコにとって、“レンタネコ屋”をすることは、人とコミュニケーションをとる手段。彼女も“レンタネコ屋”をすることで穴ぼこを埋めていくんです」。

実に魅力的なキャラクターだが、自身と重なるところはあったのだろうか。「サヨコが『有名店より、おばあちゃんのドーナツが好き』と語るシーンで、『誰かにとっての大切なものは、それがどんなものであっても一番なんだ』という言葉はわかるなあって。私も、手の温もりが感じられるものが好きで。自分で何か作るのも好きだし、プレゼントでも何か一言添えられていたり、その人が触ったことが感じられるものに惹かれるんです。サヨコは温もりの人。便利なものに頼らず、自分で良いと思うものを信じて、楽しく暮らしている人です」。

単なる“癒し”では語りきれない、人の心に寄り添う荻上作品。『めがね』(07)に出演した際には、「東京で見ているものと全く違う視点を与えられて、生活や暮らしって何なんだろうと思った」という。「荻上監督の作品は、ファンタジーと現実が入り混じる世界。ファンタジーに思えても、いつの間にかその時の自分が思っていることと重なったりするところが魅力だと思う。『レンタネコ』もそうだけれど、何かしら今の自分に疑問を投げかけてくれるんですよね」。

自身にとっての元気の源を尋ねると、「食べ物(笑)」と即答する。「以前、『人とご飯を食べることで元気をもらう人だね』と言われたことがあって。ああ、確かにそうだなって気づいたんです。旅行に行ったときや、お正月に家族や友達で集まって、大人数でご飯を食べるとすごく満たされる。元気になれるんです」。市川自身、人とのつながりを大事にする“温もりの人”。彼女の魅力がギュッと詰まった本作で、そっと心を温めてみてはいかがだろうか。【取材・文/成田おり枝】

■コラボレーション情報
ザ・プリンス パークタワー東京 コラボルーム「猫のへや」(1日1室限定) スイートルームを『レンタネコ』がプロデュース!
実施期間:5月12日(土)~6月30日(土)
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