『ソウル・サーファー』の片腕女性サーファーを直撃!「片腕よりもサーフィンを失うことの方が怖かった」
今も活躍する片腕の女性サーファー、ベサニー・ハミルトンの実話を映画化した『ソウル・サーファー』(6月9日公開)。主演は『チャーリーとチョコレート工場』(05)のアナソフィア・ロブだが、本作のキャンペーンでベサニー本人が来日。小麦色の肌にブロンドがチャーミングな22歳の彼女に、大きな人生の荒波を乗り越えた、ベサニー流・波乗り術の極意を聞いた。
サーフィンと海をこよなく愛するベサニーは、13歳の時、サーフィン中にサメに襲われ、左腕を失う。それでもサーフィンへの思いを断ち切れなかった彼女は、家族や友達に支えられながら厳しい訓練に耐え、再びサーファーの道を目指す。
映画化に当たり、家族みんなで最初の脚本作りから、キャスティング、編集の段階までかなり親密に関わったというベサニー。「自分たちがダイナミックにサーフィンをする様子をきっちりと映してほしいとお願いしたわ。サーフィンシーンも自分がスタントをやったから、最終的には心から満足できる映画に仕上がったの」。
実際に、ベサニー自身がビッグウェーブを見事にサーフィンする姿は、もはや芸術の域に入るぐらいに美しい。彼女は「サーフィンって映像で映すことがとても難しいの。本当のサーフィンの醍醐味を正確にとらえた映画ってほとんどないと思う」と語る。「実は本作も、最初のバージョンが完成した時、全然サーフィンシーンに納得ができなくて。スタッフと話し合い、自分と兄で一緒にタヒチへ行って、追加撮影をしたの。サーフィンシーンは全部撮り直して差し替え、ようやく完成したわ。最終的にそこまでやったから100%満足できる映画になったの」。
そう、ベサニーの長兄ノアは彼女の専属フォトグラファーで、次兄ティミーは、彼女の専属ビデオグラファーとして、ずっと彼女のサーフィン姿を活写してきた。「彼らは私の兄だから、自分のサーフィンのスタイルを一番理解してくれているの。再撮でタヒチに行った時、正直すごく波が荒くて、かなり危険な状態が何度かあったんだけど、そういう時にも目を光らせ、安全を確保しながら、良い映像を撮ってくれた。兄と一緒だったからこそ、私は安心できたの」。
なるほど、家族の支えが大きかったのは納得したが、片腕を失ってから、もう一度、サーフィンへと駆り立てた一番の原動力は何だったのか? 「ずばり、ひと言で言うなら、サーフィンへの情熱よ」とキッパリ答えてくれたベサニー。「私にとってサーフィンを失うことの方が、片腕を失うことよりも怖かったわ。とにかく早く海へ戻りたいと思っていたの。だから、事故後、初めて波に乗った時、感激のあまり嬉し涙が出たわ。最高の瞬間だった。その時、片腕を失ってもできる!という自信が持てたの。そこからは事故のことを考えるよりも、サーフィンを続けるには片腕でどういうふうに工夫をしていくかってことに集中していったの」。
「人生はサーフィンのよう」という劇中のフレーズがジーンと胸に浸透する。彼女は人生においても想像以上の高波を乗り越えてきたわけだが、その強さの源は何なのか? 「両親の影響が大きかったと思うわ。決してあきらめない忍耐力は、親が教えてくれたから」と両親へのリスペクトの念も強調。さらに「何か壁にぶち当たった時ほど、自分を見つめ直すことが大事」と語る。「自分に何が足りないのか?って考えて、その足りないものを持っている人を見つけるの。そして、その人のどういうところが好きなのかを考えることで、自分の悪いところを直していければと。自分にポジティブな影響を与える人たちで周りを固めていくというか。私は有り難いことに、家族や友人に恵まれているから、そのことで自分の生活も豊かになっていくんじゃないかしら」。
終始、すがすがしく快活にインタビューに答えてくれたベサニー。私たちが想像できないくらいの大波を制覇した彼女だからこそ口にできる言葉の数々は、多くの人々に希望を与え、迷っている人の背中も押してくれるに違いない。彼女の雄々しい人生を映し出した『ソウル・サーファー』を見て、感動のビッグウェーブを体感したい。【取材・文/山崎伸子】