『夢売るふたり』阿部サダヲが、回答放棄の松たか子に脱帽「松さんはやっぱり格好良い」

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『夢売るふたり』阿部サダヲが、回答放棄の松たか子に脱帽「松さんはやっぱり格好良い」

『ゆれる』(06)、『ディアドクター』(09)で、国内外の映画賞を総ナメにした西川美和監督。最新作『夢売るふたり』(9月8日公開)の完成披露試写会が6月28日に日経ホールで開催され、主演の松たか子、阿部サダヲ、そして西川美和監督が登壇。監督は「女のみっともないところ、大人の女性の生きづらさを描きたかった」と作品に込めた思いを語った。

松と阿部が扮する、火事で全てを失った夫婦が、再出発のために結婚詐欺を計画。嘘にまみれていく夫婦を通して、男女の複雑で奥深い感情と、現代を生きる女たちの心の隙間を鋭い眼差しで描き出す。主演のふたりは、西川組初参加となったが、監督は「松さんは、完全なサラブレッドなのに、普通の雰囲気が出せる人。また、今回はグロテスクな話なので、品が絶対に必要だと思って松さんにお願いしました。阿部さんは『何かきっかけがあれば!』と、ずっと狙っていたんです(笑)」と、待望のキャスティングであったことを明かした。

松と阿部も今回が初共演となる。松は「阿部さんは、以前から大好きな俳優さんで、お芝居をしているのが楽しかった。自分の目に狂いはなかったなと思いました」と答えると、阿部も「松さんは共演する前は、完璧で欠点のない、すごい女優さんというイメージ。監督が『OK』って言ったら、『うん、わかってる』って言いそうな。でも、お会いしたら、全然そんなことはなくて! さっきもコケていましたが、本当に普通の方(笑)。芝居は、それはもう素晴らしい!」と大絶賛。さらに「松さんは何をするのも早い。着変えるのもすっごい早い! 歌舞伎かっていうくらい!」と、松の一面を教えてくれた。

そして、映画に様々な愛の形が登場することから、“男女の愛”にちなんだお題に回答。したためた垂れ幕が披露された。「“男”とは?」とのお題が出された松は、「男とは、と聞かれても返事に困るものである」と、まさかの回答拒否。「すみません! 本当に思いつかなくて! 私の夫が『男とは、歌舞伎の家の娘に聞くな』っていうのを考えてくれたんですけど、ちょっと波紋を呼びそうだったので」と、白旗を上げた。阿部は「僕もこういうふうに書きたかった! そんな勇気がなかったんです。やっぱり松さんは格好良い」と苦笑し、会場の笑いを誘っていた。

そんな阿部は「“女”とは何か?」とのお題に対して、「女とはウチの猫みたいである」と回答。「なついているのか、なついていないのか、本当にわからない。急に怒ったりするし」と女性観を明かしてくれた。また「“愛”とは?」との質問を受けて監督は、「愛とは、と語るやつほど我愛し、である」と、意味深い回答で会場をうならせた。「色々な形があるから難しいものなんですよ。このふたりが演じたのは、その一つ。こういうつながり方の夫婦もあるんだと感じてほしい」と、映画の見どころを語ってくれた。

最後に監督は「本当にふたりのお芝居は完璧でした。その他の女優陣も、非常に血の通ったキャラクターになった。良い作品になったと自分でも思う」と胸を張り、阿部も「今までにやったことのない表情を引き出してもらった。色々な意見があって良い映画。是非、話し合ってください」と力強くアピール。人間の心の闇をえぐり出すような西川作品は、恐ろしいほどに生々しい。理想のキャストを得て描かれる、西川流“愛の物語”の公開を楽しみに待ちたい。【取材・文/成田おり枝】

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