「張り詰めた緊張感を伝えたい」サム・ワーシントンが『崖っぷちの男』で魅せる役者魂
パニックとなった群衆が路上で見守る中、高層ホテルから飛び降りようとする男の姿を描くサスペンスアクション『崖っぷちの男』(公開中)。本作で主演を務めたサム・ワーシントンのインタビュー映像が公開された。『アバター』(09)、『タイタンの逆襲』(12)など、SF、ファンタジー系作品の主演を務め、名実共に今やハリウッドのアクションスターNo.1となったサム・ワーシントン。『キリング・フィールズ 失踪地帯』(12)や『タイタンの逆襲』など、2012年の日本公開作品が本作を含めて5本あり、今も出演依頼が殺到している。
本作でサムが演じたのは、30億円のダイヤモンド横領罪で服役していた元NY市警官。突如、ホテル高層階壁面に姿を現わし、飛び降りようとしている、まさに人生も何もかも崖っぷちに立たされた男ニック・キャシディだ。「60mの高さにいたら、誰でもそいつは自殺しようとしていると思うだろう」というサムが語るとおり、冒頭で観客は彼の真剣な面持ちに“飛び降り自殺志願者”としての位置付けを行う。しかし、なぜここに彼が現れたのかが本作のポイントなのだ。その奇想天外な発想から生まれた本作は、裏切りと陰謀と駆け引きが渦巻く中、予想を覆しながらラストに向かって盛り上がりを見せる。ニックの行動について、サムは「人々の注意を引くことで、自分の本当の目的から人々の気をそらして、計画を進めることができるんだ」と、自殺が最終目的ではなく、「その本当の目的は映画が進むにつれて明らかになっていく」と話し、「ビルの窓の外に立つ男の話から、様々な人物の話に広がっていく。目的はニックを止めることだが、その過程で一人きりで闘う男の存在が周りに影響を与えていくんだ」とストーリー展開を明らかにする。
さらに、ニックにとってキーパーソンとなるのが、エリザベス・バンクス演じる女性交渉人のリディア・マーサーだ。「(リディアは)同僚の警官に裏切られる経験をしている。それがニックとの共通点だ」と、リディアを指名したことへの理由が本作でも重要な伏線の一つであることを示唆している。
本作の撮影の大部分は、実際に高さ約60mのルーズベルト・ホテルの壁面の縁で撮影された。撮影を振り返り、サムは「監督の映画デビュー作で、監督は様々な面で精力的に取り組んでいた」と、これまでドキュメンタリーを手掛けてきたアスガー・レス監督ならではの手法と表現へのこだわりが映像に吹き込まれていることを語る。
そして、本作がリアルで緊迫感ある映像に仕上がった要因の一つは、サムが高所恐怖症であったということだ。サムの「まさにリアルに感じたよ。恐怖感は消せない。高所はもともと嫌いだけど、撮影のためにも何とか慣れるしかない」という語り口調から役者魂を感じさせられる。その後、実際の高さの撮影に慣れたというが、「観客には張り詰めた緊張感を伝えたい。この男がいつビルから落ちてもおかしくはないと、はらはらさせるために」という彼の迫真の演技と予想以上にリアルでスリリングな展開を是非スクリーンで目にしてほしい。【Movie Walker】