『最強のふたり』のオマール・シー「この映画が大好きで、私の誇りです」
全身麻痺の大富豪と、図らずして介護役になったスラムの黒人青年の友情をコミカルに描いた『最強のふたり』(公開中)。9月1日に全国49スクリーンで公開された本作は、土日で動員7万324人、興収7906万6600円を記録。メイン館のTOHOシネマズ シャンテは土日で19回中17回が満席、新宿武蔵野館は初日に1109人を動員し、2003年に現在の3スクリーン体制になってからの初日動員記録を更新するなど、全国各地の劇場で満席の回が続出している。
実話を基にした本作は、「オマール・シーのために書いた映画と言っても過言ではない」とオリヴィエ・ナカシュとエリック・トレダノの監督ふたりが口をそろえて答える。スラムの黒人青年ドリスを演じたオマールは、監督ふたりとタッグを組むのは今回で3度目だ。もともと、フランスでは知らない人はいないほどの人気コメディアンだったオマールに、「コメディアン以外の部分も表現させたかった」とオリヴィエ監督は語った。
監督ふたりの熱望により、主演に抜擢されたオマールは、ドリス役を演じるために頭の毛を刈り、役作りのために10kgの減量と筋肉を鍛えて撮影に挑んだ。さらに、オマールとドリスは共にパリの郊外出身という共通点を持っていたこともあり、撮影ではオマールの意見が尊重され、信憑性がより高い人物像となった。
本作には軽快な会話とユーモアあふれる描写が全編にわたって散りばめられており、コメディアンとしての側面を持つオマールが映画の完成度に大きく貢献したことは間違いない。その成果は高く評価され、フランス版アカデミー賞とも言われる第37回セザール賞では、第84回アカデミー主演男優賞を受賞した『アーティスト』(12)のジャン・デュジャルダンを押さえ、堂々、主演男優賞を獲得。フランスの映画賞であるリュミエール賞でも主演男優賞を受賞している。
価値観も環境も全く正反対のふたりの最強の友情について、オマールは「それぞれが守護天使を必要としていて、良いタイミングで見付けることができた。だから最強!彼らの人生の良いタイミングで出会ったことと、互いに相手を必要としていることが重要」と、フィリップとドリスの運命の出会いについて話すと共に、「この映画が大好きで、美しい映画だと胸を張って言えます。私の誇りです」と、本作に出演できた喜びを語っている。
本作のヒットにより、フランスで半年ごとに発表される有名人好感度ランキングで圏外からいきなり3位につけ、一躍時の人となったオマール。現在、ジョニー・デップと同じエージェントに所属し、一時的にロサンゼルスに移り住んでいるらしく、ハリウッド進出も噂されているほどだ。オマール・シー、今後の彼の動向をしっかり追いかけたい。【Movie Walker】