忘れられない恋を妄想し続けるバイオリニスト、その最後の8日間とは?
『ベルセポリス』(07)で高い評価を博し、世界中から新作を待ち望まれたアーティスト、マルジャン・サトラピ。彼女のベストセラーコミックにしてヨーロッパで最も栄誉ある賞といわれるアングレーム国際漫画祭最優秀作品賞に輝いた「鶏のプラム煮」を自身の手で映画化した『チキンとプラム あるバイオリン弾き、最後の夢』が11月10日(土)より公開される。
大切なバイオリンを壊されてしまい、死ぬことを決意した天才音楽家のナセル・アリ。ベッドに横たわり、死を待ちながら、これまでの人生を振り返るなかで、ナセル・アリは美しいイラーヌとの叶わなかった恋に思いをめぐらせる。
叶わなかった、忘れられない一つの恋にこだわるバイオリニスト。彼が、巨大化した女性の胸にそっと寄り添い、うっとりとした表情を浮かべたり、愛する女性との幸せな記憶では幻想的で美しい映像があふれ、哀しく辛い思い出ではよりダークになったりと、あくまでもバイオリニストの主観で描かれる恋の妄想が、美化されたファンタジックな映像で綴られる。鮮やかな色彩で表現された独特の世界観は、まるで魔法のような美しさだ。昔懐かしいアニメのような映像や、影絵、絵画のような背景のなかで、ナセル・アリの人生が映し出される。世界的アーティスト、マルジャン・サトラピの独創的な感性が細部にまで表現された映像に引き込まれていくようだ。
ヴェネチアをはじめ、世界各国の映画祭で高い評価を博した、甘酸っぱい大人の恋物語。ユーモアとロマンに満ちたちょっと残酷な大人のファンタジー、その美しい世界に酔いしれてみてはいかがだろうか。【トライワークス】
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