野村萬斎、上地雄輔を大リーガー級と絶賛「さすがは松坂大輔のキャッチャー」

インタビュー

野村萬斎、上地雄輔を大リーガー級と絶賛「さすがは松坂大輔のキャッチャー」

狂言界のスーパースターと言われる野村萬斎だが、映画界においても、その存在感は傑出している。彼の最新作は、『陰陽師II』(03)以来、9年ぶりに主演を務めた『のぼうの城』(公開中)だ。萬斎は民衆から“のぼう様”と慕われる総大将・成田長親役を演じたが、飄々としたキャラクターが実にチャーミングで、とてもしっくり来ていた。萬斎にインタビューしたら、久しぶりの映画の現場での撮影秘話や、敵陣の総大将・石田三成役の上地雄輔との撮影裏話を語ってくれた。

『のぼうの城』は、和田竜が自身のオリジナル脚本「忍ぶの城」を基に書いた歴史小説。のぼう様が城主の忍城が、軍勢わずか500人で、石田三成率いる2万の大軍を迎え撃つという破天荒な物語だ。メガホンをとったのは『眉山 びざん』(07)の犬童一心と、『日本沈没』(06)の樋口真嗣のW監督だが、萬斎は二人体制が功を奏したと語る。「久保田(修)プロデューサーも仰っていたけど、精神的にタフな犬童さんと、肉体的にタフな樋口さんというコンビが良かったです。監督が全然くたびれないから高揚感があり、それに乗って撮影ができたという気がします」。

両監督に演出されることに喜びも感じたという萬斎。「舞台だと、僕が演出する場合、ジャッジをするのは自分です。だから、常に観客との駆け引きも考えて演じなければいけないけれど、映画では監督が喜んでくれるかどうかが大事で、だからこそ思い切ったこともやれる。突然、ウヒヒヒと笑ったりしても、駄目と言われたら、あ、そうですかと変える。でも、わりとそういうのが全部OKでした。台本どおりの演技と、ちょっと僕のテイストを入れた演技を2種類やると、後者を選んでくださったことが多かったです」。

萬斎が一番好きなシーンは、最後に初めて総大将・石田三成と向き合うシーンだ。「三成が入ってきて、講和条約みたいなことになる。あそこが僕にとっては一番の芝居のしどころでした。上地君が非常に鷹揚と構えてくれて、ようやく話せる人が出てきたなと思ったんです。その前に、平(岳大)君が演じた長束正家とのやりとりが対象的なのも良かった。長束を平君が本当に嫌なやつとして演じてくれたので、僕も伸び伸びと演じられて、楽しめたから(笑)。その後、上地君とやった時は、ちょっと格好をつけて演じました。それまでは何だかわからない人に見せていましたが、三成とのシーンは、大将どうしの対決だから、リーダーとしての風格を見せようと思いました」。

上地と対峙した時、「さすが松坂大輔のキャッチャーをしていた人だ」と思ったという萬斎。「彼の人懐っこさとか、良い人ぶりがにじみ出ていた気がします。狂言の稽古では、一対一で父(師匠)と向かい合って球を投げ合うわけです。映画の現場でも、いろんな役者さんがいて、へなちょこな球しか投げられない人もいれば、すごい球を投げてくる人もいる。上地君は、やっぱり大リーグ級だなと思ったわけです。上地君は、僕の球を受け止めてくれるかな?と思ったりもしましたし。彼は、ちゃんと受け止めてくれる包容力もあり、頼もしかったです」。

野村萬斎を筆頭に、佐藤浩市、榮倉奈々、成宮寛貴、山口智充、上地雄輔、山田孝之、平岳大、市村正親と、豪華な布陣を迎えて放つ『のぼうの城』。野村にとって、『陰陽師』の安倍晴明と同じくらいの当たり役になったのではないだろうか。狂言界だけでなく、スクリーンでももっと会いたいと願う俳優の一人だ。【取材・文/山崎伸子】

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