フランス映画界の鬼才が撮った『プライベート・ライアン』に肉迫するリアルな戦闘シーン!
『憎しみ』(95)、『クリムゾン・リバー』(00)、『ゴシカ』(03)の監督、そして『アメリ』(01)や『ミュンヘン』(05)、『エージェント・マロリー』(12)の俳優としても知られるフランス映画界の鬼才マチュー・カソヴィッツ。ここ数年は活動の場をハリウッドに移していたが、フランスへの復帰第1作として手がけたのが『裏切りの戦場 葬られた誓い』(11月24日公開)だ。
1988年のフランス大統領選挙の裏で、フランス領ニューカレドニアのウベア島で起きた悲劇的な事件を題材に描いた本作。フランス政府がひた隠しにしてきた事件の真実に興味を抱いたカソヴィッツが、完成までに費やした期間は何と10年!フランス政府、ニューカレドニアでの事件の関係者たちへの綿密な取材、入念なリサーチを経て作り出された作品は賛否両論を呼び、そこに書かれた真実をフランス政府は否定したほどだ。
さらに注目したいのが『プライベート・ライアン』(98)ばりのリアリティあふれる戦闘シーンだ。独立派と彼らを制圧しようとする憲兵隊と陸軍によるジャングルでの戦闘シーンを1台のカメラ、ワンショットで撮り、ドキュメンタリーを思わせるようなリアルさを追求。手に汗握る緊迫感たっぷりの映像に仕上がっている。
監督のカソヴィッツは主人公も務め、独立派と軍との間で板挟みになり、良心の呵責に苛まれ、苦悩し、葛藤する姿を熱演している。その他、脚本・編集・製作も兼任し、彼のこの作品にかける情熱がひしひしと伝わってくる。フランスのアカデミー賞とも言われるセザール賞で、2012年脚色賞にもノミネートされた話題作を、是非真正面から受け止めてほしい。【トライワークス】
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