『人生の特等席』ロバート・ロレンツ監督「本当のストーリーは父と娘の関係で、野球はあくまで背景なんだ」

インタビュー

『人生の特等席』ロバート・ロレンツ監督「本当のストーリーは父と娘の関係で、野球はあくまで背景なんだ」

4年ぶりに俳優業に復帰したクリント・イーストウッドが主演を務める『人生の特等席』(公開中)。10月に開催された第25回東京国際映画祭のクロージング作品として上映され、メガホンを取ったロバート・ロレンツ監督も来日を果たした。そんな監督は、これまで20年近くもイーストウッドの近くで映画作りを学び続け、生涯でただ一人の弟子と認められた存在、いわばイーストウッドDNAの継承者だ。今回、監督にイーストウッドのことから本作への思い、今後の展望などを聞いてみた。

――初めての監督作品でクリント・イーストウッドを主演に選んだ理由を教えてください

「この脚本が来て、とても魅了されてね。この作品は多くのレベルで魅力的だと思った。実際、クリントが役にとても反応して、一緒に働く機会を僕らにもたらしてくれたしね。僕らのどちらかが止めることなしに、僕らはふたりとも仕事を続けることができたんだ。シンプルだけどユニークなストーリーだと思ったし、僕にとっては最初のプロジェクトとしては、とてもハンドルしやすいものだったしね。素晴らしい役とキャラクターが、良いキャストを集めてくれたんだ。最初にやるには理想的なものに思えたよ」

――俳優C・イーストウッドの魅力は?『グラン・トリノ』の後、(本作まで)クリントを画面で見ることはありませんでした。彼はまだ演技をすることが好きなのでしょうか?

「そうだよ。もし、正しい役を得られればね。彼は映画スターなんだ。注目の的になるのは好きだよ。そういったことは衰えないと思う。その一部は彼にとっては楽しいものだからね。たぶん最もチャレンジな面は現場にいて、みんなが彼のもとではなく、僕のところに集まることだったと思う。時々、彼は椅子に一人で座っていることもあったし(笑)。『何で誰も僕に話に来ないのだろう?』って感じでね。今後はずっと彼は監督業に専念すると思うよ」

――イーストウッドから受け継いだ表現やオリジナルの表現割合としてどちらが多いですか?また、この作品を作るうえで意見が食い違うことはありましたか?

「あったよ。間違いなくね。でも、はこの作品を自分のものにしたかった。クリント・イーストウッドの作品と明らかに違うようにしたかった。これはとても真っ直ぐなストーリーだ。どちらかと言えば、伝統的なストーリーテリングのテクニックが必要な。だから、あまり実験的なことは必要としなかった。早い編集とかカメラの動きとかはね。そういったことは、何もやれなかった。そういったことは適切だと考えなかった。それで違う作曲家、クリントが一度も仕事をしたことがない人を選んだんだ。それと彼があまり好きではない長めのレンズを使ったりしたよ」

――スポーツを越えたユニバーサルな観客に向けた作品として、どんな工夫を凝らしましたか?

「2時間の映画よりも、脚本の方がずっと多くの野球のシーンが入っていた。僕は野球が好きだし、アメリカではそのことが特別な魅力になっているのも知っていた。なぜなら、僕らの多くが野球と一緒に育っているからね。だから、ノスタルジックなものがそこにあり、僕はそれを捕まえようと試みた。でも、この国でも野球が好きじゃなくて、気にしていない人たちはたくさんいる。明らかに国外にはもっといるね。だから、そういったことが魅力的になるよう、簡単に理解できるようにしたかった。でも、それはストーリーの背景にすぎない。本当のストーリーは父と娘の関係で、次がジャスティンとエイミーの間の話で、その後に他の全てのキャラクターがいるといったものだ。人間の感情や側面がこの映画のキーだよ。そういったことは誰でも感情移入できる。野球はあくまでも背景なんだ」

――マルパソ・カンパニーはドラマティックな作品が多いですが、監督デビューを機にチャレンジしたいジャンルはありますか?

「僕は全てのジャンルが好きだ。『ミスティック・リバー』は、僕らが一緒にやった作品の中で、特にお気に入りの一本だよ。それは僕がやりたいものに最も近いものだね。その映画は、自分がこうなってほしいと思うような出来に仕上がっていた。まるで、自分で監督したみたいにね。ああいった題材が好きなんだ。犯罪ドラマとかで今、追いかけているものがある。この作品と何かとても違うものをやりたいんだ。ある特定のタイプの監督として枠にはめられたくないからね」【Movie Walker】

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