華のある仏女優レア・セドゥがマリー・アントワネット、ポリニャック夫人との三角関係を分析

インタビュー

華のある仏女優レア・セドゥがマリー・アントワネット、ポリニャック夫人との三角関係を分析

フランス若手女優のなかで、今、最も注目を集めているのがレア・セドゥだ。『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(11)では冷徹な暗殺者に扮し、ウッディ・アレン監督作『ミッドナイト・イン・パリ』(11)では、華やかな笑顔で観客を魅了した彼女。最新作は、フランス王妃マリー・アントワネットのドラマティックな人生を、かつてない視点から見つめた『マリー・アントワネットに別れをつげて』(12月15日公開)。ミステリアスで官能的な本作で、レアはその匂い立つような魅力を遺憾なく発揮している。そこで、来日したレアを直撃!

フランスで最も権威あるフェミナ賞に輝いたベストセラー小説を映画化した本作。王妃の朗読係を務める少女の視点から、フランス革命勃発後のヴェルサイユの裏側を描き出す。レアは本作に惹かれた理由をこう語った。「王制が崩壊する時というのは、フランス人にとってターニングポイント。映画では、革命勃発後の3日間のみが描かれているの。このたった3日間で王妃の立場が、失脚という形で全く逆転してしまうのね。表舞台の王妃だけでなく、生活の裏側も描くことで、王妃の心の内までをも映し出すことができたと思うわ」。

レアが演じるのは、王妃の朗読係に女性がいたという史実から生まれた主人公シドニーだ。「シドニーの視点で物語は進むけれど、シドニーは影の人。ヒロインではないのよね。でも私は、この“影の人”というのがとても気に入ったの。実在する人ではなかったので、シドニーというパーソナリティを私自身で自由にクリエイトすることができたのよ」と笑顔を見せた。“影の人”シドニーが見つめる王妃は、人々を翻弄するような、自由奔放な魅力を持った女性だ。シドニーはそんな王妃に憧れを抱き、次第にその思いは恋とも言える、危ういものへとエスカレートしていく。

熱い吐息と眼差しで、見事に王妃への思いを表現してみせたレア。シドニーの気持ちをどのように理解したのだろうか。「まだシドニーは若くて、未熟なのね。マリー・アントワネットに対する思いは、絶対愛だと思うのだけれど、彼女は、自分で自分の気持ちをきちんと理解できていないのよ。ただ『好きだー!』って思い込むだけでね(笑)。もし、マリーにセクシュアルなことに誘われたとしても、どうしたら良いのかが全然わからないくらい、彼女は子供だったんだと思う。『彼女のためだったら、何でもするわ!』って、それはもう犠牲的精神よね。もちろん、私もスターに憧れたり、誰かを好きになった経験はあるけれど、シドニーのように、自分自身を見失うほどに誰かを好きになったことは、まだないわ(笑)」。

ヴェルサイユ宮殿での撮影が実現した本作。衣装や家具の一つ、一つまでにこだわり、当時の息づかいが再現される様は圧巻だ。「ヴェルサイユは、映画を撮るうえでの最高のシチュエーションだし、最高のデコレーションよ。本当にマリー・アントワネットが生きたヴェルサイユで、コスチュームを着て並んで立っていると、当時にタイムスリップしているような気分になったわ!宮殿は、月曜日が休館日なので、毎週月曜日を使って撮影をしたのだけれど、ヴェルサイユでの撮影はずっとエキサイトしっぱなしだったのよ」。

興奮に満ちた撮影だったというが、なかでもお気に入りのシーンがあると続ける。「ポリニャック夫人のグリーンのドレスを着て、階段を堂々と降りて行くシーンがとても気に入っているの。シドニーは、王妃を虜にするポリニャック夫人に嫉妬をするのだけれど、その嫉妬心は複雑なものなのよね。自分とポリニャック夫人は身分も立場も全然違うから、悔しいけれど彼女をライバルとして見ることはできなかった。そんななか、王妃に『ポリニャック夫人の身代わりになれ』と言われるわけ。身代わりだけれど、あの階段を下りる場面で、初めてシドニーは皆の注目を得ることができた。それまでは、誰からも見られることのない少女だったのよ」。

キャラクターを骨の髄から理解し、一人の少女の生き様をスクリーンに刻み込んだレア。その分析力こそ、確かな演技力の賜物だろう。話題作が相次ぐ今、女優としての面白みをどのように感じているか尋ねると、「想像して、自由にキャラクターをクリエイトしていくのが、とても面白いわ。シドニー役はまさにそのような役柄。これからも色々な役柄に挑戦してみたいわ」と、本作から受けた刺激を教えてくれた。

挑発的な眼差しと、透き通るような素肌、肉感的なボディと、芳しい花のごとき女優、それがレア・セドゥ。マリー・アントワネットをダイアン・クルーガー、ポリニャック夫人をヴィルジニー・ルドワイヤンが演じ、3人の美女が織りなす愛と嫉妬も、実にスリリングだ。是非、レアの輝きと共に、美しくも残酷なドラマに心を奪われてほしい。【取材・文/成田おり枝】

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