製作から約3年、お蔵入りから復活した幻の家族ドラマとは?
日本では毎年700本以上もの映画作品が劇場公開される。とはいえ、2011年の興収No.1になった『ハリー・ポッターと死の秘宝PART2』のように大ヒットを記録した作品はほんの一握りにすぎない。また、莫大な製作費をかけても、それに見合うような興収を上げられなかった残念な作品というのも少なくない。洋画の配給会社が買い付けたものの、トラブルで公開できなくなったり、ヒットが見込めないために公開されず、そのままDVD化されるというケースも多々あるのだ。
ただ、DVDにでもなれば、我々の目に触れる機会があるが、完成したものの日の目を見ないで、お蔵入りしてしまう作品というのも少なからずある。そんなお蔵入りした作品ばかりを集めて上映する「お蔵出し映画祭」というイベントが2011年から尾道でスタートしたのだが、そのお蔵出し映画祭2011で第1回グランプリに輝いた作品がようやく日の目を見ることになった。
その作品とは1月26日(土)から公開となる『しあわせカモン』だ。2009年に撮影され、同年にロケ地の岩手県内で先行上映されるや、1万4000人の観客を動員するものの、経済的な事情により、劇場公開の道が閉ざされていた。現在、地元の東北で活躍するミュージシャン・松本哲也とその母の実話を、『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』(12)の石垣佑磨&鈴木砂羽主演で映画化した。
ヤクザの父親と覚醒剤中毒の母親を持った少年が、刑務所にいる父親と中毒患者の母親と離れて児童養護施設で育ち、その後、母親と暮らすようになるものの、非行に走り、一時は教護院生活を余儀なくされる。だが、そこで出会った音楽教師の勧めもあり、ミュージシャンを目指していく姿を描く、涙なしには見られない物語だ。
松本哲也は東日本大震災後、仲間たちと炊き出しキャラバン「いわて三陸復興食堂」を立ち上げ、被災地で支援活動を続けている人物でもあり、その名前を聞いたことがあるという人もいるはずだ。また、本作の主題歌で1月23日(水)に10年ぶりにメジャー再デビューすることも決まったという。単なる幻の一本というだけにとどまらない魅力を秘めた作品であるのは間違いないだろう。【トライワークス】