野波麻帆が女優とスタイリストの二足のわらじを履く理由とは?
女優・野波麻帆は、スタイリストという、もう一つの肩書きも持つ。女優としては『愛を乞うひと』(98)で主人公の娘役を演じてスポットライトを浴びてから、数多くの作品に出演し、阿部寛主演のラブストーリー『つやのよる ある愛に関わった、女たちの物語』(1月26日公開)では、信頼する行定勲監督の下、濡れ場にも挑戦した。その一方で、ファッションに精通し、同じ事務所の長澤まさみや、自身のスタイリストを務めたりもしている。野波にインタビューし、ふたつの顔について話を聞いた。
本作では、奔放で恋多き女・艶を巡る愛憎劇が繰り広げられる。劇中で軸となるのは、彼女に翻弄された艶の夫(阿部寛)で、かつて艶を愛した男と、その男に関わった女たちの葛藤が紡がれている。野波が演じたのは、不倫中の職場の上司と、さらに艶の元夫のふたりと関係を持つ橋本湊役だ。「湊は本能で動き、不倫をしたりしていますが、本来は愛を求めている人なんだろうなと。本作では色々な女性が登場しますが、それぞれに共感できました。小泉さんがワインをかけ合ってバトルをするところとかもそうです。そういうところが女性の面白さというか、可愛さなのかなって」。
可愛さについては、男性についても感じたそうだ。「渡辺いっけいさん演じる社長が、奥さんに不倫がばれた時、テンパッて大変なことになるんですが、そこも可笑しくて可愛いんです。男と女って全然違う生き物だけど、ああいう人を可愛く思えるのが女性であり、男性とは別の生き物なんだなと感じました」。
艶については羨ましく思ったそうだ。「あんなに奔放に生きているのに、彼女の本性をわかったうえで、夫は一途に最後まで一緒にいますよね。最後に阿部さんが『ざまあみろ』と言うんですが、そういう関係性も羨ましく思いました。絶対に本質がわかっていないと言えないセリフですから」。
行定監督作は『パレード』(10)に続いて二度目の参加となったが、行定組について「行定組全体がそうですが、本番と本番じゃない時の切り替えがすごく良くて。雰囲気をしっかり作って導いてくださる監督です。ちょこちょこ言わないけど、しっかりと全体の画が見えている。濡れ場のシーンでも言われたことは、パンツをゆっくり上げてほしいということくらいで、雰囲気重視にしてくださいました。監督のことは心から信頼しています」。
また、気になるスタイリスト業についても聞いてみた。「ドラマの『モテキ』は自分も出演しましたが、スタイリングもやりました。全部自分でやると、結構大変ですが、やっぱり表舞台と裏方にいるのは全然違っていて面白いんです。表に立って自分の芝居を見ても、何が良いのか全然わからないので。でも、私が長澤(まさみ)に衣装を持って行って、それを着た長澤が出ているテレビや雑誌を見ると、すごく可愛いとか、すごく綺麗だと思うんです。ああ、やって良かったと実感できますね」。
女優として表舞台に立つ自分については、良いと思ったことが一度もないのだとか。「自分の演技を見る度に、こうしたら良かったとか、いつもあれこれ思ってしまいます。でも、逆に裏方から女優さんを見ると、ああ素敵だな、と思えるんです。感動して、泣けてきちゃったりすることもあるし。そんな時、世の中にはいろんな仕事があり、女優って、支えてくれる人がいるから、そこに立てるのかなと感じます。表舞台に立つだけでは、その実感は得られなくて。私はどちらも経験できたことがすごくラッキーでした」。
両方の仕事が好きだから、できれば両方やっていきたいという彼女。「これからも人間らしく、いろんなことをちゃんと見逃さず、一つずつ向き合っていきたいと思っています。だから、スタイリングもやっていきたいんです。それがお芝居にも影響してくると思うので」。
もちろん、このインタビューの日の衣装も、彼女自身のスタイリングによるものだ。溌剌とした笑顔で、自分の生き方を語ってくれた笑顔が眩しかった。【取材・文/山崎伸子】