イ・ビョンホン来日。役者としての信条は「分別を持たないこと」
韓国のアカデミー賞といえる大鐘賞で、史上最多の15部門を制した話題作『王になった男』(2月16日公開)で、イ・ビョンホンが来日。1月29日にペニンシュラホテル東京で来日記者会見を行った。イ・ビョンホンはキラースマイルを見せ「初めての時代劇で、王の役も初めて。でも、今回時代劇だから挑戦しようとしたわけではなく、物語が非常に素晴らしく、楽しい作品に思えたので、決めました」と挨拶をした。
『王になった男』は、実在の冷酷な第15代朝鮮王と、その影武者を、イ・ビョンホンが一人二役で演じた時代劇。韓国では1000万人超の観客を動員した国民的映画だ。大ヒットした要因について聞かれたビョンホンは、まず「イ・ビョンホンが出演しているから(笑)。冗談です」と言った後、こう語った。「実際の王の日記は15日間空白になっていて、本作ではそこにフィクションを加味しました。そこでまず関心を持ってもらえると思います。そして、影武者のハソンはどん底の生活をしていましたが、劇中では王様の真似をして、世の中に代わり、政治へ不満やうっぷんなどを晴らしてくれたり、正してくれたりしたので、観客は大満足できたのではないかと」。
王と俳優の共通点については、興味深い意見を語ってくれた。「表面的には似ています。周りの視線を集め、行動も制限され、権力を乱用してはいけない。でも、違う部分もあります。王は民の声に耳を傾け、そのことをやっていく。でも、俳優はファンの好みだけでに合わせてしまうと、自分のカラーを見失ってしまったり、初心を忘れてしまうから」。
また、イ・ビョンホンが、後輩に向けた助言は「分別を持ってはいけない」だそうだ。「アーティストもそうですが、私たちには奇抜なアイディアや創意工夫が必要なんです。そうじゃないと、いろんな創造の芽を切ってしまうことになるから。子供が成長していくなかで、親はよく『分別を持て。もっと大人になれ』と言いますが、私は反対のことを言っています。いくつになっても少年としての気持ちを持っていた方がいろんなものを表現できると思うから」。
さすがは、イ・ビョンホン。キラースマイルだけではなく、その雄弁ぶりにも感心させられた。今やアジアだけではなく、『G.I.ジョー』や『RED2』の続編も控えた彼の作品に今後も目が離せない。【取材・文/山崎伸子】