『レッド・ライト』監督「デ・ニーロとの仕事は奇跡に近い体験だった」
棺桶に閉じ込められた男の脱出劇という意表を突いたワンシチュエーションスリラー『リミット』(10)で注目されたロドリゴ・コルテス監督。監督最新作『レッド・ライト』(2月15日公開)では、名優ロバート・デ・ニーロを迎え、巧みなトラップを駆使した科学的なサスペンスで、観客の度肝を抜く。来日したコルテス監督にインタビューし、綿密な脚本作りや、デ・ニーロたちとの撮影秘話について聞いた。
物語は、シガニー・ウィーバー扮する物理学者のマーガレット・マシスンと、キリアン・マーフィ扮する助手のトム・バックリーの目線で進んでいく。彼らは、これまで超常現象を科学的に解き明かしてきたが、彼らの前に、伝説の超能力者サイモン・シルバー(ロバート・デ・ニーロ)が立ちはだかる。コルテス監督は、入念なリサーチをして、脚本を練り上げていったようだ。
「1年半の間、いろいろと取材をしました。超常現象については肯定派、否定派と、どちら側の話からもインスパイアされました。でも両者共、自分に都合の良いことしか信じない。まず自分が唱えている理論があり、都合の良い現象だけを取り上げ、それを肯定しようとするんです。我々の脳も当てにならないし、嘘をつくこともあるんだなあと思ったし、私自身もいろいろな書物を読んで、考えたりしました」。
ロバート・デ・ニーロ、シガニー・ウィーバー、キリアン・マーフィと、本作では三者三様の個性が際立っている。3人のキャスティングについては「頼んでも簡単に出てくれるような人たちじゃなかったから、そういう意味ではすごくラッキーでした」と満足気に語る。「まず、シルバー役は、ひと目見ただけで、いかに伝説的な超能力者なのかが分かるほどのカリスマ性が欲しかった。デ・ニーロは、現役の役者の中では最高峰だと思っているのでお願いしたんだ。彼は、この世界のジャイアントと言っても過言ではない」。
デ・ニーロの出演シーンは少ないが、圧倒的なオーラを放っている。「今回、シルバーの冷酷さを表すために、動きをかなり制限してほしいとお願いしたんです。カラーコンタクトを付け、目が見えない状態でもあったし。シルバーは普段はあまり感情表現をしないけど、一旦、群衆の前に立つと、そこで爆発するんです。動きも派手になり、声も大きくなる。彼は見事にその落差を演じてくれました」。
デ・ニーロの話になると、とりわけ目が輝き出した監督。「彼は40年以上、ずっとトップに君臨しているところもすごいけど、さらにまだ彼は、俳優という仕事をリスペクトし、真摯に役柄と向き合っている姿勢が素晴らしい。彼は、与えられた役割をできる限り誠実に演じようとしてくれるんです。それは、あたかも子供が無心になって粘土でいろんなものを形作っていくかのような作業でした。僕の役割といえば、その素晴らしい瞬間を捉えるということだけで。何て言うか、それは奇跡に近い素晴らしい体験でした」。
毎回、観客を驚かせるようなストーリーテリングは見事だが、常に脚本上でそのことを意識しているのだろうか?「いや、僕のゴールは、観客を驚かせるということではないんだ。強いて言えば、観客をこれまで経験したことのないような状況に置き、何かを体感してもらいたいと思っている。そこで、全く違う視点から物事を見られるようになる映画を作っていきたいんだ」。
なるほど、確かに本作では、超常現象という摩訶不思議な出来事を、意外な方向から見ることで、新鮮な発見をさせてくれる。さて、あなたは散りばめられた伏線をつなげ、謎を解くことができるだろうか? 自信のある方はトライしていただきたい。【取材・文/山崎伸子】