太田莉菜が爆弾魔役に「好奇心が働いて興奮した」、湧き上がる女優への思い

インタビュー

太田莉菜が爆弾魔役に「好奇心が働いて興奮した」、湧き上がる女優への思い

生田斗真が、人間としての感情を持たない美しき殺戮者に扮して話題の『脳男』(2月9日公開)。連続爆弾魔役を演じた太田莉菜が、生田に負けず劣らず、これまでにない全く新しい顔を見せている。不気味さと迫力、切なさまでを表現した彼女の存在感は、背筋がゾクゾクするほどだ。そこで、太田莉菜に新境地にトライした感想を直撃。心の奥に迫っていくと、気さくで、自身を飾らない素顔が見えてきた。

江戸川乱歩賞を受賞した首藤瓜於の同名小説を原作に、“脳男”を取り巻く事件がスリリングな映像と共に描かれる本作。そのなかで太田が演じるのは、爆弾魔・緑川(二階堂ふみ)に心酔し、自らも犯罪に手を染めていく女性ゆりあだ。「オファーを受けた時に、『爆弾魔の役があるんだけど』って言われて(笑)。さらにタイトルが『脳男』。『ええ!?何それ!?』って(笑)。『こういう役はみんなやりたがらない』といった声もありましたが、私の場合、知らないことに足を踏み入れていきたいっていう、好奇心が働いてしまうんです。興奮しましたね。それに、お芝居のブランクもあったのに、こうやって声をかけていただいて。『前に進めた』という思いがしました」と笑顔を見せた。

ゆりあにとって、緑川は絶対の存在だ。緑川の思うがままに、ゆりあは殺人者への道を歩んでいく。役柄の印象を聞くと、「脚本を読んで、色々と書き起こしていったんです。これだけのテンションを持っている人を演じるのは、恐怖でもありましたから。緑川との関係、周囲の人との関係、見た目に関しても色々と想像して、彼女を掘り起こしていったら、共感できる部分がすごく多かったんです」と振り返る。

続けて、ゆりあをこう分析してくれた。「緑川に心酔していく様は、何か自分がすがる対象がないと生きていけないということの表れ。それくらい、ゆりあは弱い。『私のことを、見て見て!』と誰かにすがることって、意外とどこでも起きていることだと思うんですよね。女の子が、男の人によって変わることもよくあること。悪い男に引っかかると、どんどん駄目になっていったり。私だって、ひがんだり、嫌な気持ちを持ったり、恋愛をして心配でしょうがないっていう気持ちだって持ったことがある。一つボタンを掛け違えれば、いくらでも人は狂気に陥ってしまうもの。緑川は常軌を逸しているけれど、ゆりあは普通の人なんです」。

キャラクターの骨の髄まで理解しようと、心を寄り添わせた。「何事にも裏表があって、『自分は何なんだろう』っていう思いは誰にでもあると思うんですよね。私は、ゆりあが緑川を守り抜こうとするシーンを思い出すと、今でも泣きたくなるんです。『彼女はどうしたかったんだろう』って。緑川を守ったのは、愛を選んだことと一緒。彼女はすごく葛藤や苦悩して生きている人だから、ただ見過ごされては可哀想。しっかりと、彼女の爪痕を残したいと思って。ゆりあがいることで、緑川がもっと邪悪なものに見えれば良いなと思いました」。

緑川役を演じるのは二階堂ふみ。彼女との共演も大いに刺激になったようだ。「ゆりあ役の私としては、現場ではふみちゃんが全てだったんですよね。もう、ふみちゃんしか見ていない(笑)。ロケの間も一緒に過ごす時間が長かったので、お風呂に入って一緒にしゃべったりもして。人って、年齢に関係なく、興味があることに行動を起こしている人に惹き付けられるもの。ふみちゃんはまさにそういう人で。すごくはっきりとした情熱を持っている。ふみちゃんのお芝居を見ていると、すごく衝撃を受けるし、根性もあって、私も『負けていられない。よし、やるぞ!』って勇気付けられる気がします」。

2001年にモデルとしてデビュー。活躍の場を広げてきたが、今、芝居への情熱を強くしていると話す。「13歳の時にお仕事を始めて、12年が経ちました。モデルって、遊んでいたり、交友関係が広いとか、派手に見られるけど、私の生活って本当に地味なんです(笑)。パーティーに行ったりするより、こたつに入っている方が好き(笑)。結婚をして、子供を産んでという生活をしていくと、掃除をして、ご飯を作ってと、地味なことの繰り返しです。でも、そのなかには選択肢がいっぱいあって、曖昧にしてはいけないことがたくさんあることに気がついたんです。その表現をお芝居でできたら、どんなに楽しいだろうって。瞬間の表現は、モデルでもできるけれど、お芝居では生活と表裏一体の表現ができますから」。

表現者としての思いがふつふつと湧き上がるが、これからの目標を聞くと、「私より若い子も、可愛い子も、綺麗な子もたくさんいる。でも、自分の良さは、年齢を重ねることで、一歩、一歩、見えてくるものかもしれない。私は、一つずつ納得しないと、前に進めないタイプなんです。飛び越えることができないから、細かい作業をやって、自分のなかで消化していかないと駄目。ゆっくりと年をとって、本当の自信を身につけていきたいですね」と微笑んだ。すらりとしたスタイルに、エキゾチックな顔立ち。その外見の魅力だけでなく、内側に潜む情熱と努力が彼女を一層と輝かせている。『脳男』での体当たりの熱演が彼女にとって大きな一歩となることは間違いない。【取材・文/成田おり枝】

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