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田中圭&川原和久が分析、伊丹刑事の変化とシリーズの魅力

インタビュー

田中圭&川原和久が分析、伊丹刑事の変化とシリーズの魅力

2000年の誕生以来、高視聴率をキープし続ける大人気ドラマ『相棒』。いよいよ3月23日(土)より、劇場最新作『相棒シリーズ X DAY』が公開される。特命係を取り囲むバラエティ豊かなサブキャラクター陣も人気の本シリーズ。今回、主役に抜擢されたのは、川原和久演じる捜査一課の伊丹憲一刑事だ。新たな登場人物となる、サイバー犯罪対策課の捜査官・岩月彬(田中圭)を相棒に、持ち前の熱血漢を発揮する。そこで、川原と田中を直撃!『相棒』の魅力に迫った。

特命係の杉下右京(水谷豊)に手柄を奪われ、憎まれ口を叩くことでおなじみの伊丹刑事。12年に渡って伊丹を演じてきた川原に、主役を任された感想を聞くと「あまり、主役という意識はないんですよ。『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』(09)は、米沢に焦点を当てて彼の私生活までを追いかけていましたが、今回は完全なバディもの。大河内監察官と角田課長、三浦刑事と芹沢刑事など、周りのレギュラーキャラクターもそれぞれ、バディになっているんです。ふたり一組で動く、その代表となるのが伊丹と岩月という感じですね」。

一方の田中は、「まず、『相棒』に関われると聞いてびっくりしたんです。最初は自分が演じるのは、犯人役だと思っていて(笑)。まさか相棒を組む役になるとは思っていなかったので、色々な意味で驚きましたね!」と、『相棒』シリーズの仲間入りを果たしたことに興奮を隠せない。「伊丹刑事はアナログな人なので、携帯番号を交換する時も、岩月に携帯電話を放り投げてしまう。岩月は、その対比としてデジタルな人になるわけです。そんな岩月が伊丹刑事の魅力に惹かれて、自分自身も変わっていく。伊丹刑事を通して、川原さんに魅力を感じることも多かったですね」。

ある殺人事件をきっかけに、金融界と霞ヶ関の思惑が明らかになるなど、骨太の社会派サスペンスが展開する本作。アナログ人間・伊丹の体当たり捜査が見どころだ。とりわけ、伊丹が容疑者を全力疾走で追いかけるシーンは、その熱血ぶりをびしびしと感じられること請け合いだ。川原は「50歳を過ぎたおじさんにあんなことをやらせて。疲れないわけがないですよ(笑)。テントで休んでは、田口(トモロヲ)さんと、病気や老化の話ばかりしていましたね。あのシーンは、エキストラの方々も素晴らしかった。俳優を集めたのかと思うほど、良い表情をしていて。おじさんの疲れた表情と、エキストラの方の表情が見どころです(笑)」。

田中は、こう振り返った。「僕はあまり走っていないんですよ。現場では若手だし、『僕、走りますよ!』と(橋本一)監督には言ったんですが、『いいよ、走らなくて』と言われて。『伊丹が体で活躍して、岩月は頭脳で活躍するのが、今回の役割分担だから』と。皆さん朝からそのシーンの撮影をしているのに気が引けましたね。川原さんも話かけられないくらい、めちゃくちゃ疲れてましたから!僕はあの日、すごく覚えています(笑)!」。

その体当たりの熱血ぶりこそ、伊丹の魅力。当初は特命係の憎まれ役だったにも関わらず、シリーズを追うごとに愛すべきキャラクターとなり、伊丹ファン、通称“イタミン”も増殖中だ。伊丹の変化を、川原自身はどう感じているのだろうか。「あるエピソードをきっかけにというわけではなく、昔からずっと積み上げてきているものや、ちょっとずつ足しているものが、いつしか多彩なキャラクターとなって、皆さんに支持していただけるようになっていったと思います。あと、ライバルの亀山(寺脇康文)がいなくなったことで、彼ばかりに向いていた視点が、周りに向くようになったんです。そこから伊丹の表情がまた変わっていった。亀山の正義を引き継いでいる面もあるでしょうね。もともと伊丹刑事は、正義の人。ただ、亀山の正義とは方法論が違うから、お互いにいがみ合っていたわけで。亀山がいなくなったら、彼の正義感をも背負うようになったんです」。

12年間の積み重ねが、『相棒』の世界観をしっかりと確立。ファンの心を捉え続けている。シリーズ初参加となった田中は『相棒』の魅力をこう語った。「僕は今回、ドラマにも出させていただきました。現場では、水谷さんが大きな軸となって、スタッフやキャストの中心にいらっしゃるんです。水谷さんは、主役として凛としているけれど、とても人を立たせることを考える方で。それだけにみんなの仲間意識が強いし、それぞれが『前作を守る』ではなくて、『前作を越える』という気持ちでいる。その時、その時の時事ネタで、しっかりと勝負しているのも魅力ですね」。

川原もうなずきながら、「うちのチームは非常にバランスが良いんです」と話す。「連続ドラマにおいては、主演である特命係のふたりとゲストの絡みがあって、それを邪魔しないように、それでいてしっかりと存在感のある脇役がいる。脚本もそれを活かすようなものになっています。ベースにあるのは、ストーリーを重視するということ。その分、脇役をあまり立てないようにしているわけです。脇役を立ててしまうと、もうネタ大会のようになってしまって、とても1時間の枠には収まりません。今回の劇場版では、メインの方が脇を固めてくださったので、僕らの物語ができたと思っています。これもまた、非常に良いバランスになっていましたね」。

「世界観がしっかりとしていればいるほど、面白い作品になる」と川原。劇場版最新作は、伊丹刑事と岩月捜査官の凸凹ぶりが笑いを誘い、最後には彼らの熱意に胸打たれるエンタテインメントに仕上がった。サブキャラクターの面々もこれまでには見せない顔を見せるなど、『相棒』の世界観にさらなる深みを与えている。是非とも劇場で彼らの活躍を楽しんでほしい。【取材・文/成田おり枝】

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