『アンナ・カレーニナ』ジュード・ロウ「僕のカレーニン像がイメージから外れていないことを願っている」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『アンナ・カレーニナ』ジュード・ロウ「僕のカレーニン像がイメージから外れていないことを願っている」

インタビュー

『アンナ・カレーニナ』ジュード・ロウ「僕のカレーニン像がイメージから外れていないことを願っている」

かつてグレタ・ガルボ、ヴィヴィアン・リー、ソフィー・マルソーなど豪華女優陣が演じ、幾度となく映画化されてきた『アンナ・カレーニナ』。時代を駆け抜けたアンナの美しくも激しい愛の物語が独創的な舞台演出、華麗な音楽、衣装によって新たな作品として生まれ変わり、3月29日(金)より公開を迎える。

今まで出演してきた作品ではプレイボーイな役が多かったジュード・ロウ。今回は国家の重要人物としての体面と世間体を重んじるアンナの夫カレーニンを好演。小説に書かれていないカレーニンの人格の奥深さまで演じ切っているジュードに本作について語ってもらった。

政府高官のカレーニンを演じたジュードに、彼はどのような人物なのか尋ねると、「僕が演じたアレクセイ・カレーニンはアンナの夫で、名家出身の政治家。社会的に高く評価されていてとてもまじめで、敬神の念が厚い男なんだ。この物語の冒頭で、彼は自分自身を良き夫で、家族を養う忠誠心のある人間だと思っている。彼は暴力的ではなく、どちらかと言えば、肉体的には臆病で、どこか鈍い感じがするんだ。そう、頭の中だけで生きているような男なんだよ。この物語を通して、彼はアンナの行動に引きずられ、ゴシップと感情的な世界に足を踏み入れてしまう。この物語はカレーニンを通しても自分の精神や肉体、恐らく自らの魂に再び触れることを学ぶ人間の物語を教えてくれるんだ」。

我々が小説や他の映画で知っているカレーニンとジュード本人が思い描いたカレーニンとどのように違うのだろうかと聞くと、「トム・ストッパードがトルストイの並外れた小説から見事な脚本を書き上げてくれたことはもちろんのこと、ジョー・ライト監督と話し合った時に重要だったことは、複雑で立体的な登場人物。アンナのラブストーリーに対して、カレーニンを従来通りの悪人や敵として描くのはあまりに単純すぎるし、このラブストーリーを間違って強調することになりかねないと思ったんだ。そこで僕や監督はカレーニンを理解しようとしたんだ。役に人間性を与える時、僕の感覚の中で、その人物が突然リアルになる瞬間があるんだ。さっき言ったように、二次元ではなくなるんだ。僕はこの本を読んでいる時に、本当にそう感じた。ある時は頑なに道徳を守ろうとするカレーニンに苛立ちを覚えたりもした。だが、最終的に彼はアンナを理解し、許そうとするし、誠実さと献身的な愛情で自分が命をかけて守っていたものを失ってしまったことを見つめ直そうともする。彼は妻を失ってしまうという点では犠牲者だが、最後には精神的な勝利を収めるんだ。カレーニンという男はそういう描き方に値する男だと思ったよ。僕が思い描いたカレーニン像が他の人たちのイメージから大きく外れていないことを願っているが、僕はその点に興味を抱き、それを物語に付け加えて演じたんだ」。

自分の解釈を加えてカレーニンを演じたジュード。俳優として演じるべき役をとても静かに表現し続けるのは難しかったと語る。「カレーニンを演じるに当たって難しかったことの一つが簡潔さだった。僕はいつも新しいことをしたいと思っているんだ。体を使って表現する役の方が快適に演じられるが、カレーニンのように今までに演じてこなかった、何かとても違うことに挑戦するのは良かったよ。ジョーもこの美しい世界観を大胆な色使いとバレエのような動き、たくさんの振付で描き、ロシアの独特な社会を夢のようなビジョンで創り上げた。その中で、僕はカレーニンを落ち着いたカチッとした人間にしたかった。彼のリズムは時計のように正確だから、僕は全てを最小限に留めようとしたんだが、これが結構難しかったんだ。けれども、そう演じることがカレーニンの自分の感情を形に表すことができない無能さを描く手助けになると僕自身思ったんだ」。

プレイボーイ風の役柄から、最近では『シャーロック・ホームズ』シリーズでなじみのワトソン、本作のカレーニン役でより知的で落ち着いた役を演じるようになってきたように感じるが、40歳を迎えた時期に、彼に求められる役の種類が変わってきたのかと尋ねると、「今後、そうなるように願っているよ。他の俳優たちのキャリアを見ても、不幸にも女性はそうではないが、40代の男は本当に充実していると思うよ。演技や役にもっと重点を置くことができるようになる。僕自身も年齢と共に複雑になっていくと思うし、それに応じて複雑さを持った良い役が巡ってくると思う。そう考えると気持ちも晴れるし、ワクワクする。20代や30代は、若い俳優や女優にとって地雷原にいるような感じだったと思う。新参者とか、新顔というレッテルを巧みにすり抜けようと駆け引きをやりたがる人もいるけど、僕自身は必ずしもやりたいわけじゃないと思っているし、興味を持ったことはなかった。だから、役と作品に没頭できる年代に突入したことに本当にワクワクしているんだ。そういう道を進みたいし、最近の数作品では実現したと思う。やっと長い道のりの果てにね!」

初めて知った恋に心を燃やすアンナの夫でありながら、政府高官としての体面と世間体にとらわれるカレーニンの孤独な魂を味わい深く演じたジュード・ロウ。40歳へ突入し、カレーニンのような静かでありつつ、威厳を持つような役柄のオファーも増えてきたジュードの今までに見たこともない円熟味あふれる演技を是非とも劇場で堪能していただきたい。【Movie Walker】

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