シュワルツェネッガーが伝授!部下の心をつかむ術は「失敗を恐れないこと」
ハリウッドのオヤジたちが面白いほどに元気だ。そんななか、思わず「待ってました!」と声をかけたくなるのが、アーノルド・シュワルツェネッガー主演復帰作『ラストスタンド』(4月27日公開)だ。カリフォルニア州知事を約7年務め、しばらくスクリーンの第一線から退いていたシュワルツェネッガー。65歳になった彼が、本作では期待を裏切らない痛快なアクションを見せつけてくれる。そこで、来日したシュワルツェネッガーを直撃!
「良い映画に不可欠なのは、観客を夢中にさせる優れたストーリーだ」と話すシュワルツェネッガー。本作で演じるのは、田舎町に住む保安官レイ・オーウェンズだ。移送中に逃走した超大物麻薬王がレイの町に近付き、レイは戦闘経験のない部下たちと共に、最後の砦=ラストスタンドとなって悪に立ち向かう。
麻薬王がスーパーカーやハイテク武器で向かってくるのに対し、レイ一行が手にしているのは骨董物の武器と気概だ。ハイテクとローテクのコントラストが、たまらなく興奮を誘う。メガホンを取るのは、韓国屈指のフィルムメーカー、キム・ジウン監督。シュワルツェネッガーは「素晴らしい監督」と賛辞を述べ、こう明かしてくれた。「現代を舞台にした話だけれど、そこにオールドスタイルを混ぜるというのは、監督がまさに意図したこと。彼は西部劇のファンなんだ。この映画には古き良きスタイルがあるだろう?最近の映画では、『スパイダーマン』や『X-メン』『バットマン』シリーズなど、ビジュアルのエフェクトが大きいものが多い。でも『ラストスタンド』では、伝統的な手法を取り入れたかったんだ」。
レイというキャラクターが魅力的だ。穏やかな物腰で人々と接し、事件現場では老眼鏡に頼りながら証拠を見聞する。そんな普通の男が、町の危機に対してどう迎え撃つのかが見どころだ。「これまでに演じてきた役と違って、レイは過去を背負っているキャラクターだ。もともとはロサンゼルスの警察官で、過激な仕事もこなしていた。しかし、身も心も傷つき、田舎に引っ込んだんだ。麻薬王コルテスがやって来た時、レイはこう自分に問うんだよ。『また俺は悪と戦えるのか』ってね」。
部下たちにもチャーミングなキャラクターがそろった。レイは彼らの相談に耳を傾け、力になろうとする、いわば理想の上司だ。州知事を務め上げた今、感じる理想のリーダー像とは?「失敗を恐れないことだね。僕だって数々の失敗をしてきた。でも、それを恐れなければ、人々をリードできると思う。そして、自分の行く方向性がしっかりと見えていることも大事だ。自分自身で先が見えていないと、部下を誘導したくても、どこに引っ張って行ったら良いか、わからないだろう(笑)?」。
ハリウッドのトップスターから州知事へと、アメリカンドリームの王道を歩いてきた。映画作りと政治に共通するものとは何だろう。「映画作りというのは、『この部分は誰のアイデアだ』とか言えるものではないんだ。監督、プロデューサー、カメラマン、そして俳優においてまで、みんなが出来る限りのアイデアを出して、そのコラボレーションによってできるものだ。それは政治も全く一緒で。一人の人物の意見で動かすわけではなく、みんなが寄り集まって会議をして、多数決をしながら進んでいくものなんだよ」。
『ダイ・ハード』シリーズで、25年にわたって“ついてない男”を演じ続けているのがブルース・ウィリスだ。シュワルツェネッガーと同じく、タフで格好良いオヤジ代表である彼は「アクションでないシーンにこそ、良いアクション俳優の条件が見える」と語っている。シュワルツェネッガーが思う、良いアクション俳優の条件とは?「ブルースの言うことは非常に正しいね。今は飛んだり、跳ねたり、CGでいくらでもアクションシーンを作り出すことができる。でもね、アクション俳優にとって必要なのは、目の動きや身のこなしで、観客に『この人はヒーローなんだ!』と信じさせること。役者に自信がなければ、観客は『ヒーローだ』と信じられないだろう?自信を持って演じることが大事だね」。
さらに、こう付け加えた。「もう一つ大事なことがある。それはクールに見せること。クリント・イーストウッドが『ダーティーハリー』では、ハンバーガーをかじりながらマグナムをぶっ放すだろう(笑)?すると、みんなが『クール!』って思う。実際には、もっと慌てて撃つはずだし、ありえないんだけどね(笑)。でも『クール!』と思えるような瞬間を挟むことは、アクションヒーローの大切な条件だと思うよ」。
この言葉どおり、銃を構える姿はもちろん、「俺はこれからだ」と言い放つセリフも最高にクールだ。クライマックスでは、傷だらけで悪に挑み、生身の肉体を使ったアクションをたっぷりと披露するなど、「こんなシュワルツェネッガーが見たかった!」というシーンが満載!是非ともスクリーンで『ラストスタンド』を楽しんでほしい。【取材・文/成田おり枝】