キム・コッピが血みどろスラッシャーに挑戦!可憐な笑顔に潜む飽くなき好奇心

インタビュー

キム・コッピが血みどろスラッシャーに挑戦!可憐な笑顔に潜む飽くなき好奇心

『息もできない』(08)で鮮烈な印象を残した韓国女優キム・コッピ。何と、最新作『クソすばらしいこの世界』(6月8日公開)では、血みどろのスラッシャーホラーにチャレンジ!めった打ちに合いながら、叫び、怒り、逃げ惑う。怒涛の展開に至る本作で、新たな表情を見せてくれた彼女。直撃インタビューすると、刺激的な映画の内容とは裏腹に、何とも愛らしい笑顔で撮影を振り返ってくれた。

本作の舞台はロサンゼルスの片田舎。キム演じる韓国からの留学生アジュンは、日本人留学生に誘われてキャンプに向かうが、そこで恐ろしい殺人鬼に遭遇するのだ。一見、よくあるホラー映画のシチュエーションながら、本作に潜むのは異国間のアイデンティティの相違だ。文化や言葉のギャップが、殺戮劇に発展していくという異色のスラッシャー映画なのだ。「実は、スラッシャー映画は苦手なんです」と苦笑するキム。脚本の印象を聞くと、「国と国の違いが葛藤を生んでいく。その違いを繊細な目線で描いています。ゴアでスラッシャーですが、そのディテールが効いていてすごく面白いと思いました。女優として、新たなジャンルに挑戦できると感じましたね」とうなずく。

アジュンは、遊んでばかりの日本の留学生に苛立ちを覚え、言葉が通じないなかで孤独を募らせていく。キムは「野心的で、未来に向けて突き進んでいる女の子」と演じた役柄を分析。「アジュンは、こう進むべきという道を決めて、そこに自分を合わせていこうとしている。私は違いますね。考え方が自由なんです。今、仕事の場をグローバルに広げていますが、それも『世界を目指そう!』と思ったからではないんです。自由に、『面白そう、楽しそう』と思う方向に進んでいたら、手に入ってきたもの。自由な行動が、機会をつないでくれたんです」。

「今度は、ベルリンやフランスに行くことになりそう」と話す彼女。グローバルに活躍の場を広げるうえで、アジュンのように異国で疎外感を感じることはあるだろうか?「私は疎外感やフラストレーションを感じることは、ほとんどないんです(笑)。もちろん、言葉や文化の違いはありますが、それも私にとっては楽しいことで。私は日本語が少しできて、英語も話すことができます。今回の撮影現場でも、日本人のスタッフや役者さんとは日本語で話して、現地のアメリカのスタッフとは英語で話して。自分の母国語ではない言葉を、二つ使うという現場で(笑)。とても特別な経験ができました」。

血まみれになって、過激な描写に挑んだ。本作が新鋭女性監督の朝倉加葉子の長編デビュー作ということにも驚くが、キムは「特殊メイクを施した自分の手を見て、思わず写真を撮りました(笑)」と現場を大いに楽しんだようだ。続けて、「役を演じて、役に没頭していると、妙な快感があるんです。今回はスラッシャーのお話ですが、これは役者でなければできない、役者だからこそ得られる経験ですから」と女優魂をのぞかせる。

「英語で長編映画を撮ったのは、今回が初めてです。英語演劇に対しての、自分の可能性も見えた」と話す。充実の女優生活を送っているが、ターニングポイントを聞くと、こう答えてくれた。「やはり『息もできない』は、芝居人生のなかで一番のターニングポイントでした。それまでは、望んでいる演技スタイルがあるけれど、それが何なのか、自分のなかではっきりと見えなかったんです。『息もできない』のヤン・イクチュン監督と会った時、直感で『この人と仕事をしたい』と思いました。実際に彼と仕事をしてみたら、彼の演技スタイルが、まさに自分の探していた演技スタイルだったんです。瞬間的に、はっきりとそれがわかりました」。

最後に本作で最も楽しんだことを聞くと、「これは言っちゃいけないのかな?ラストのことだから!」とコメント。「最後には驚くような展開があって。全くやったことのない演技にチャレンジしました。とても楽しかったですね」と、意味深にアピールしてくれた。終始、柔らかな笑顔でインタビューに答えてくれたキム・コッピ。その可憐な素顔のなかにしっかりと輝いているのは、飽くなき好奇心と果敢な行動力だ。直感を道標に何でも楽しんでしまう彼女は、向かうところ敵なし!まずは、ラストまで驚きの展開を見せる本作で、彼女の新たな挑戦を見届けてほしい。【取材・文/成田おり枝】

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