『モンスターズ・ユニバーシティ』の監督が語る、ルーキーでも大ヒット作を作れる理由

インタビュー

『モンスターズ・ユニバーシティ』の監督が語る、ルーキーでも大ヒット作を作れる理由

大ヒット作『モンスターズ・インク』(01)の前日譚を描く『モンスターズ・ユニバーシティ』(7月6日公開)で、待望の劇場監督デビューを果たしたダン・スキャンロン監督が来日。既に6月21日に全米公開され、全米オープニング興行成績で2週連続No.1ヒットを記録している。スキャンロン監督にインタビューし、本作の製作秘話や、製作総指揮ジョン・ラセターとの仕事について語ってくれた。

『モンスターズ・インク』での名コンビ、マイクとサリーの仕事は、子供の悲鳴を集めて、街のエネルギーに換える“怖がらせ屋”だ。本作では、彼らの大学時代に遡り、夢に向かって邁進するマイクの物語をメインに、サリーとの出会いや仲間たちとの友情が描かれていく。監督によると「最初の主人公はサリーだったけど、途中からマイクに変えたんだ」とのこと。「マイクは大きな夢を追っているが、なかなか思いどおりにいかないというところが、多くの人の心を振るわせるのではないかと思ってね」。

本作では、形も個性もバラエティにあふれたモンスターたちが登場する。最強の怖がらせ屋になるという夢を持つマイクにとって、小柄で可愛い風貌は、コンプレックス以外の何ものでもないが、いつしかそれは彼の個性となっていく。監督は「マイクはコンプレックスを乗り越えたところで、何かを見つけることができた。それは普遍的で、みんな経験していることじゃないかな」と話す。「マイクは、いろんなことに長けているし、彼にしか備わってない能力もたくさんある。真実は100万通りあるから、何事もやってみないとわからない」。

モンスターのなかでも今回異彩を放っているのが、モンスターズ・ユニバーシティのディーン・ハードスクラブル学長だ。彼女は、伝説の怖がらせ屋として名を馳せた女性モンスターで、強烈な威圧感を放つ。「実は最初、このキャラクターは男だったけど、女性にしたら面白いんじゃないかと思って変更したんだ。設定としては、史上最強の怖がらせ屋ということで、デザインにそのことは反映させたよ」。

ハードスクラブル学長の内面的なキャラクターも決して紋切り型ではなく、深みがある。「悪役にするつもりは全くなかった。彼女の欠点は、自分が成功しているだけにエゴが強いところだ。ただ、彼女はものすごく機知に富んでいて、そのことが心理的な脅威を与える。僕が大学時代に一番怖かった先生といえば、頭が切れ、常に正しくて、指摘をズバズバ入れる人だった。学長も同じで、マイクとサリーに対してはネガティブなことでも、言っていることは基本的に正しいことばかりだ。そんな学長だから、僕も大好きなキャラクターとなったよ」。

本作で、長編監督デビューを果たしたスキャンロン監督だが、やはりジョン・ラセター率いるディズニー ピクサーは、クリエイターにとって、とても恵まれた環境だという。「僕が最初にピクサーに入った時、いかに密にコミュニケーションし、お互いを応援し合う場所なのかということに感銘を受けたんだ。ピクサーでは、ルーキーの監督でも大ヒット作を作れる。でも、それは最高のチームの助けを借り、多くのことを学べるからだ。あと、もう一つ。彼らはリスクを取ることを恐れない。どちらかというと、背中を押してくれる環境にあるんだよ」。

さらに、本作で製作総指揮を務めるジョン・ラセターは「本当に良いチアリーダー」と絶賛する。「彼は、すごく上手に作り手を応援し、いろんなインスピレーションを与えてくれるよ。どの作品でも、作っている途中で大きな壁にぶち当たる。僕も今回、本作で『本当にこの映画、大丈夫なのかな!?』と、不安に思う瞬間があった。でも、そういう時、ジョンは必ずみんなの前に立ち、もともと、どうしてこの映画を作ったのか、一番の核心の部分は何なのか?ということを思い出させてくれる。そういうところは本当にすごいよ」。

マイクとサリーをはじめ、ユニークなモンスターたちの競演が愉快な『モンスターズ・ユニバーシティ』は、建物のデザインまでモンスターになっている遊び心満載の娯楽作となっている。是非、大きなスクリーンで見て、こだわり抜いた美しい色彩や質感など、隅々までたっぷり堪能したい。【取材・文/山崎伸子】

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