美しき開拓者・菊地凛子が教える、「心が折れた時の対処法」とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
美しき開拓者・菊地凛子が教える、「心が折れた時の対処法」とは?

インタビュー

美しき開拓者・菊地凛子が教える、「心が折れた時の対処法」とは?

鬼才ギレルモ・デル・トロ監督が、“KAIJU”と人型巨大兵器の壮絶な戦いを描いた映画『パシフィック・リム』がいよいよ8月9日(金)より公開される。圧倒的スケールと迫力に目を奪われ、冒頭から興奮しっぱなしのSFスペクタクル。「大好きな映画!もう何回も見ているんです」と目を輝かせるのは、ヒロインを演じた菊地凛子だ。本作の魅力と、“凛”と生きる秘訣を聞いた。

本作では、太平洋深海の裂け目から突如、凶暴な“KAIJU”が出現。人類は全世界の英知を結集した人型巨大兵器“イェーガー”を開発し、“KAIJU”との対決に挑むのだ。幼少の頃から日本の特撮映画やアニメに親しみ、“オタクガイジン”を自認するデル・トロ監督が「こういう映画をずっと作りたかった」と満を持して挑んだ渾身作だが、菊地は「監督の人間としての深さや愛情がすごく出ている映画」と話す。

イェーガーのパイロットは2人。そのロボットに、デル・トロ監督はメッセージを託した。「色々な国の人が、お互いを信じ合って一歩踏み出していくという姿が、すべてロボットに集約されているんです。パイロットが、過去やトラウマをシェアして、お互いを信じないと、ロボットは動き出さない。共にひとつのものを乗り越えようとするというのは、非常にスケールの大きなこと。そのスケールの大きさをこんなにも美しく、しかも、チャーミングさを残したまま描くなんて、新しい領域の映画だと思います」。

「本作の怪獣やロボットは、格好良いだけじゃなくて、チャーミング」と菊地が語るように、その造形からは、デル・トロ監督の日本文化への愛がひしひしと伝わってくる。「監督は、私の集中力が途切れそうになると、『となりのトトロ』の歌を日本語で歌ってくれたりして。『どこまで(日本のアニメに)詳しいんだ!』と思いました」とニッコリ。続けて「愛情の深い監督で、総勢700名くらいが現場で働いているんですが、監督はその全員にまで目が行き届いている。これだけスケールの大きな映画を作っているのに、例えば、私の眉や前髪など、ディテールまでこだわるんです。こんな監督は初めてです」とデル・トロ監督の手腕に舌を巻く。

菊地が演じるのは、KAIJU に家族を殺された悲しい過去を持つ、イェーガーのパイロット・マコ役だ。印象を聞くと、「彼女には、トラウマがあっても、そこにちゃんと顔を向けて、見つめようとする強さがある。一度失敗をしても、また挑もうとするんです」とうなずく。「彼女がもう一度立ち上がる時に必要だったのは、パートナーだった。やっぱり、人の支えが大事で。私も今、アメリカにチームがいて、彼らがいて初めて、私は立っていられると感じる。恐れず、勇気を持って人と関わり合うことで、一歩踏み出して行けると思うんです」。

マコの強さは、海を渡り、女優として果敢に挑み続ける菊地の姿と重なる。『バベル』(06)での衝撃的なハリウッドデビューから、ここまではどんな道のりだったのだろう。「チャレンジを強いられた年月でした。草がぼうぼうに生えているところをならす作業だったなと。一度も同じことをしていないと自負していますし、リスクを厭わずやってきました。たくさん恥もかきましたから、覚悟もできましたね(笑)!でも、恥ずかしい姿を温かい気持ちで見てくれていた人もいるし、そういった経験すべてが無駄ではなかったなと。そう思う瞬間が、毎日起こっているんです」。

「楽な方向に行ったとしても、それでは達成感が得られない。それは自分の癖なのかな?」と笑う。恥をかいたり、心が折れそうになる時もたくさんあると話すが、そんな時はどうやって立ち直るのだろう?『もう、終わっちゃったし!』と思うんです。考え過ぎるところに行ってしまうと何も得られないというのは、これまでで良くわかった。やらなくてはいけないことが一杯あるのに、そっちに囚われていては時間の無駄だし、面白くないですよね」。

なんとも潔く、格好良い。クールなイメージとは裏腹に、彼女からあふれ出すのは温かな人間味だ。「自分が何を好きで、何をしたいのかを見極めた時、私にとってそれは、人間として人と関わることだったんです。情熱を持って『こうしたい!』と思っている監督がいれば、その情熱について行きたいと思う。今回も撮影前には、2ヶ月間くらいのハードなトレーニングをしたんですが、チャーリー(ハナム)と励まし合うことで、乗り越えることができた。女優業は、毎回、現場が変わって、ものすごい数の新しい人と出会える仕事です。そうやって人間らしさに触れることが、面白い。だから、続けていられると思うんです」。

「自分が何を好きなのかを見極めることは、孤独な作業と捉えるべき」と彼女。孤独な作業を経て、自身の核を見つけたからこそ、彼女はその名の通り、“凛々”しく、輝いている。是非『パシフィック・リム』で、大迫力の映像と共に、菊地凛子の雄姿を見届けてほしい。【取材・文/成田おり枝】

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