全裸で監禁シーンに挑戦の間宮夕貴、脱ぐ決心をさせたものとは?
鬼才・石井隆監督の最新作『甘い鞭』が9月21日より公開。数々の衝撃作を放つ石井監督が今回挑むのは、忌まわしい過去を抱え、昼は女医、夜はSMクラブのM嬢というふたつの顔を持つ女性・奈緒子の物語だ。17歳の奈緒子役には、グラビアアイドル出身の間宮夕貴が抜擢され、32歳の奈緒子を演じる壇蜜と共にオールヌードを披露。延々と陵辱されるという難役を、体当たりで演じきった。「本格的演技は初めて」という間宮。女優のスタートとしては、あまりにも過酷な役どころとなったが、彼女を直撃すると、「どんと来い!という気持ちで挑みました」と力強い言葉が聞けた。
原作は、角川ホラー文庫史上、最高にショッキングでエロティックな問題作とされる大石圭の同名小説。間宮演じる17歳の奈緒子は、隣家の男に拉致監禁され、陵辱の日々を1か月も強いられてしまうのだ。初めてのヘアヌードも辞さずに過激シーンに臨んだが、オファーの感想を聞くと「はじめは本当に不安でした。原作を読んで、監督にお会いして、脚本を読んで。読めば読むほど、私で大丈夫かしらと思った」と振り返る。
その不安を振り払ったのは、石井監督の存在だ。「脚本を読んで、相当ハードな撮影になるだろうなと思いました。でも、『石井監督の世界に入りたい』という気持ちが強かったんです。私、監督の『人が人を愛することのどうしようもなさ』(07)が大好きで、今までに何回も見ていて。こういう映像のなかに私が入ったら、一体どうなるんだろうと、すごく興味がありました」とうなずく。「石井監督の作品には、どん底に落ちてしまうキャラクターが多いのですが、ただ、かわいそう、惨めと思うだけではなく、『愛してあげたい』と思わせる魅力があって。すごく惹き付けられるんです」と石井ワールドは、ハードな役柄に飛び込むのに充分な魅力を持っていたようだ。
全裸になるだけではなく、鞭で打たれ、縄で縛り上げられる。撮影中に躊躇するような瞬間はなかったのだろうか。「脚本を読んだ段階で、どうなるかはわかっていたので。心の中でワクワクするような気持ちもありました」と驚きの告白。「実際に撮影に入ったら、毎朝、『今日はこのシーンだな。よし!』と気合を入れていました。グラビアは間宮夕貴としてやっていますが、映画では奈緒子として生きることになる。なので、『いざ、やるぞ!』と決めてからは、全然、躊躇することもなかったです。監督に『やれ!』といわれたら、絶対に嫌だとは言わないようにしようと思っていました」。
辛かったシーンを聞くと、「体力的に大変だったのは、連れ去られるシーン」とのこと。確かに、体を強引に持ち上げられ、地下室に引きずり込まれる場面のリアルさは息を呑むほど。「監督から『本気で逃げろ。もし逃げ切ったら、もう1回撮るから』と言われて。終わったら、アザだらけでつかみ跡もできていましたね。でも相手の俳優さんも、本気で逃げる私の制服を引っ張っていたら、手の皮がめくれてしまったらしくて。壇蜜さんもS嬢役の屋敷(紘子)さんも、傷だらけになってやっていたので、私だけがしんどいんじゃないと。もっと頑張らなきゃと思いました」。
鞭打ちのシーンも「本当に当ててもらっています」と言う。「痛かったですけど、それもわかっていましたから。『遠慮せず、良い音でお願いします!』って言ってました」と、可憐な笑顔で言ってのける。監禁の恐怖も被虐の表情も、リアルな演出から導き出されたものだというが、「リアルな痛みの表情から、それが快感の表情に変わるシーンがあるんです。あそこは、『私、笑えない』と思いましたね。頑張って、快感に変わる気持ちを作りました」と複雑な心理描写を述懐。
すると「演技に対する興味がすごく沸いてきたんです」と目を輝かせた間宮。「すごく楽しかったし、完成したものを見て、本当にやって良かったと思った。完成作を見たときの快感をもっと味わいたいです。監督や壇蜜さんをはじめとする役者さんも、素晴らしい人たちばかり。こんな人たちに囲まれて、すごく幸せだなと思います」と初めてのチャレンジで得たものは限りない。
「芯の強い、格好良い女優さんになりたい。しばらくは、吊るされたり、縛られたりする役は勘弁してほしいですけど(笑)」と最後まで、清々しいほどの強さを見せる。『甘い鞭』に身を捧げ、奈緒子のトラウマをスクリーンに表出させた。その潔い覚悟と熱意に、頼もしさを感じずにはいられない。是非、女優・間宮夕貴の誕生を目撃してほしい。【取材・文/成田おり枝】