尾野真千子&真木よう子、共演続く舞台裏を語る

インタビュー

尾野真千子&真木よう子、共演続く舞台裏を語る

是枝裕和監督の第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作『そして父になる』(9月28日公開)で、子供の取り違え発覚に戸惑い、葛藤する2人の母親役を演じた尾野真千子と真木よう子。父親役の福山雅治やリリー・フランキーの熱演もさることながら、母親役の尾野と真木が表現した心の揺らぎや深い母性愛は、家族の絆というテーマをより深く掘り下げた。プライベートでも仲が良い2人にインタビューし、是枝組の撮影秘話を聞いた。

6年間大事に育ててきた息子は、取り違えられた他人の子だった。2組の家族が、この衝撃的な事実に向き合い、葛藤しながらも受け止めていく姿を、カメラは丁寧に活写していく。尾野は福山扮するいわゆる“勝ち組”エリート・良多の妻で、一人息子を溺愛するみどり役、真木はリリー扮する町の電気屋を営むガサツな雄大の妻で、3人の子供を育てる肝っ玉母さんのゆかり役を演じた。

尾野は、脚本を読んだ時「難しい」と頭を抱えたそうだ。「取り違えをどう理解していったら良いのか、また、その母親役をどう考えて演じたら良いのかと悩みました。でも、よう子の子供の接し方とかを見ていると、母なんです。だから、身近でよう子をずっと見ていました」。

真木は「すごく衝撃的な話ですよね。やはり母親として自分が育ててきた子が他人の子供だったというシーンを撮る時、どういう感情が起こるのかは現場に入らないとわからなかったです」。 素の2人も、どちらかというと、尾野はゆかりに、真木はみどりの方が近いと言う。尾野は「私は山育ちの自然児だし、どちらかというとリリーさんと一緒の方が良いんじゃないかなと。よう子のほうが、都会派というか、福山さんの相手としても合っているんじゃないかと思いました」と語ると、真木も「確かにキャラクターとしては逆だもんね」と微笑む。

現場に入ってからも、戸惑いは続いていたという尾野。「演じるうえで、みどりの気持ちはすごく大事にしましたが、やはりそれはただの自己満足で。見てくれる人が、自分をちゃんと母として見てくれるのか、すごく不安でした」。真木は3人の子役との共演シーンが多かった。「私はただ、てんやわんやしているだけだったので、真千子を見て、大変そうだなと思っていました。一人息子を持つみどりの方が、母親として揺れるシーンがたくさんあり、集中しないといけなかったから」。

2人とも是枝監督たちとカンヌへ行ったが、とても良い経験ができたと言う。尾野は「すごく幸せを感じました。自分の演技を見た感想や拍手をいただいたりできるのは、一番のご褒美だと思うんです。本当にうれしくて、これからももっともっと、自分なりに伝えていきたいという気持ちが大きくなりました」と興奮気味に語ると、真木も「いただいたのが作品への賞だったので、そういう日本映画のチームに加われたといううれしさがすごくありました。個人賞とは別で、作ってきた全員が喜べる賞。これからやっていくうえでの希望にもなりました」。

2人は、『外事警察 その男に騙されるな』(12)や、人気ドラマ「最高の離婚」など、近年共演作も多い。お互いに刺激を受ける部分について尋ねてみると「面と向かって言うのは恥ずかしい」と照れ合う。尾野は「全部です」とキッパリ。「全く違うから。私もこんなに可愛くなりたいなとか、こんな芝居ができたら良いなとか、目指すところがいっぱいありすぎる。だからこそとても良い刺激になるし、良いお友達というか、良い仕事仲間、良い関係でいたいと思える人です」。真木も「そう。そうなの」とうなずく。「違うからこそ、自分にないものがたくさんあるからこそ、勉強になるところがたくさんある。例えばここは私がやったらこうはできないなと思ったりするんです。本当にいてくれて良かった!」。尾野も「愛しているから」とお茶目に真木を見つめる。

人気・実力共に兼ね備えた同世代を代表する女優、尾野真千子と真木よう子。そんな2人の演技については、カンヌで審査員を務めたニコール・キッドマンからも「女優さんが素晴らしい」とお墨付きをもらっている。『そして父になる』の受賞は、是枝裕和監督率いるスタッフ陣と、福山雅治をはじめ、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキーら最強の俳優陣の力を結集して勝ち取った栄誉なんだと、改めて実感した。【取材・文/山崎伸子】

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