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『危険なプロット』の美青年「苦労したのはキスシーン」

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『危険なプロット』の美青年「苦労したのはキスシーン」

『8人の女たち』(02)、『スイミング・プール』(03)のフランソワ・オゾンの監督最新作は、スリリングな心理サスペンス『危険なプロット』(10月19日公開)。本作で、周りの人々をミステリアスな魅力で虜にしていく美青年クロード役を演じたのが、オゾン監督に見出された新星・エルンスト・ウンハウワーだ。来日したエルンストにインタビューし、本作の撮影秘話を聞いた。

主人公の国語の教師ジェルマン役は、『しあわせの雨傘』(10)に続き、オゾン監督と2度目のタッグとなるファブリス・ルキーニ。エルンストは、ジェルマンから個人的な作文指導を受けていく才能ある高校生クロード役だ。クロードの書く文章は、友人ラファの家を覗き見するような内容だったが、ジェルマンはその物語に魅了され、思いもよらぬ深みにはまっていく。エルンストは、クロード役に大抜擢された時、本当に興奮したそうだ。「すごくうれしかったです。感激したけど、動揺もしました」。

クロード役は、複雑な内面を持つ繊細な役どころだ。「父親の体が不自由な上に、母親が不在ということで、クロードは自分ひとりで何でもしなければいけなかった。家族の愛情がないゆえに、ラファのような家族に憧れ、自分もそのなかに入りたいと思ったのでしょうね。彼は愛情や人の心理を理解する能力に乏しく、どこか幼さがあり、その不器用さにはすごく共感できました」。

クロードがラファの母親エステル(エマニュエル・セニエ)に急接近し、キスをするシーンはかなり刺激的だ。「あのシーンは苦労しました。いろんな方向から移動撮影をしなければいけなくて、技術的にも大変なシーンだったので。しかも1シーン1カットの長回しだから、技術的にもパーフェクトじゃないといけなかった。ほとんど1日かかりましたね。でも、僕は何度もキスをするのは、全然嫌じゃなかったです(笑)。エマニュエルにも『大丈夫ですか?嫌じゃないですか?』と聞いたのですが、『けっこう気に入っているわよ』と言ってくれました(笑)」。

オゾン監督の演出については「普通の監督とは大いに違っていました」と言う。「普通、監督はカメラの横に立って、役者の動きを決めたりはせず、撮影監督に任せるんですが、オゾン監督の場合、常にカメラの横にいて、構図をチェックするんです。だから、俳優との距離が近くて、とてもやりやすかったです」。

その演出はとても細やかだそうだ。「動線の指示も細かったです。今回はアップのショットが多く、ちょっとした動きがとても重要でした。オゾン監督はかなりの完璧主義者だと思います。光の入り方や全てにおいてそうでした。また、彼にはヘアスタイリストの才能もあります。特に女優さんのヘアは、ヘアメイクの方がいるにも関わらず、監督ご自身がかなり手を入れていました。実はルキーニさんも俳優になる前は美容師をやっていたので、現場には3人も美容師がいたんです(笑)」。

本作で、第38回セザール賞の有望若手男優賞にノミネートされ、第18回リュミエール賞では最優秀新人男優賞を受賞し、前途洋々のキャリアを切り開いたエルンスト。憧れの俳優ヴァンサン・カッセルとは『マンク 破戒僧』(11)ですでに共演済みだ。彼曰く「僕は小さな脇役で待ち時間が多かったので、彼の演技をずっと観察し、多くのことを学びました」とのこと。今後については「この映画の後なので、わりとダークな役をオファーされますが、今後は笑えるようなコメディにも出演してみたいです」と笑顔で答えてくれた。

端正な顔立ちに今後が楽しみな演技力、加えて明るく前向きな性格という、モテ要素がいっぱいのエルンスト。『危険なプロット』が日本で公開されれば、日本の女性ファンも急増しそうだ。【取材・文/山崎伸子】

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