映画史上最も大胆にレズビアンセックスを描いた衝撃作『アデル、ブルーは熱い色』で監督と主演女優が険悪に!?
第66回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞するとともに、その過激な性描写がセンセーションを巻き起こしたフランス映画『アデル、ブルーは熱い色』(『Blue is the Warmest Color』)。紆余曲折を経てアメリカでは10月25日から公開となる同作が第51回ニューヨーク映画祭で上映され、脚本・製作も手掛けたアブデラティフ・ケシシュ監督、主演女優のアデル・エグザルコプロスが記者会見に応じた。
カンヌでは審査委員長のスティーヴン・スピルバーグ監督も絶賛し、審査員の満場一致で受賞が決定。グラフィックノベル(「Le bleu est une couleur chaude」)が原作の映画としては初の快挙であり、また、10分以上にわたる過激なレズビアンセックスシーンを演じたふたりの女優アデル・エグザルコプロスとレア・セドゥにも賞が贈られるのは史上初の出来事(パルム・ドールでは通常監督のみの名前が呼ばれる)と、既存の殻を打ち破った話題作となった。
一方で、ケシシュ監督対アデルとレアの確執が物議を醸し、「監督にすべてを捧げて1年を費やした。二度と一緒に仕事をしたくない」などと語ったと伝えられていたことから、今回のアデルの登壇はある種のサプライズであり、その言動が注目されていた。
同作は、アデル扮する15歳の高校生アデル(役と本名が同じ)とレア扮する年上の美大生エマが思春期に経験した、激しくも儚い恋の物語。レズビアンのセックスシーンばかりが取り沙汰され、メディアの反応に激怒したケシシュ監督が、一時期「恥をかかされている気分だ。この映画は上映されるべきではない」と発言するまでに発展。しかし、ふたを開けてみればアメリカでの評価は高く、結局NC-17指定で公開されることになった。
冒頭ケシシュ監督は、「映画にしたいと思う題材はいくつもありますが、1つのことが他よりもより強いものになり、この作品ができました。何故この作品かというのは自分自身にも常に問いかけていることですが、私は、観客の皆さんに、自分にも同じような経験があると感じ、それをシェアしてもらえたらと思っています」と、あくまで普遍的なテーマであると主張。
また、一時の感情に流されやすい思春期の愛のもろさや、激しい感情の後に関係が機能するためには同レベルの人間であることが必要であり、アデルとエマの家庭環境の違いを描くことによって、地位による上下関係がはっきりと分かれているフランス社会が抱える問題や現状も踏まえている、奥深い作品であることを強調した。
濃厚なセックスシーンを含め、監督のストイックな演技への執着がふたりの女優たちを辟易させたと言われているが、「俳優たちにも自由を与えましたし、即興の演技をさせることもありました。時には私が決めた路線を外れることもありましたが、何か新しいものを見出すことができた時は、それを採用したりしました」とケシシュ監督。しかしそれを聞きながら苦笑したアデルは、「英語で話しますね」と断ったうえで、「確かに無意識の範囲で、即興の演技は多少あったのかもしれないけれど、監督の描いたアデル像が常に基本だったわ。とにかく監督とレアと3人で忍耐強く長い時間をかけて役について話し合った上で演じたし、1時間とか2時間とか撮り続けていると疲れるけれど、監督からたくさんエネルギーももらったし、ボディランゲージも含めて何かいいものを生み出したことも確かね。母親が撮影現場に来ることも許されたし、確かに時間的な自由もあったわ」と皮肉をチクリ。
するとすかさずケシシュ監督が、「2時間なんてオーバーだよ。アデルは誇張しているね。長くてもワンシーンの撮影は40分だったよ。君の発言には今後も気を付けなきゃ」と笑いながらも眼光鋭く釘を刺し、アデルが、「あら、英語わかったの?勉強したのね」(監督はフランス語で話し、通訳がついていたが、アデルの回答はフランス語に訳していなかった)とやり返す緊迫の一瞬もあった。
アデルは、「女性を正当に評価してくれる作品はフランスではあまりないので、この映画に出演したいと思っていました。自分のすべてをかなぐり捨てた後に、人はその意味を自問自答して後悔することもあるけれど、私は全く後悔してないわ」ときっぱり!
「そんなにいろんな女優に会ってないが、アデル役を演じたがっている女優はたくさんいた。でもアデルの人生経験やパーソナリティから、アデルに会った時すぐに『彼女こそがアデルだ』と思って起用した」と相思相愛ぶりをアピールしたケシシュ監督は、続編について問われると、「私はアデルというキャラクターが大好きで、彼女のことを想像し、またこの仕事をしている間に、かなり遠い将来のことにまで考えが及んだんです。彼女は、人生において色々な環境の中で、様々な経験をしていくんです。アデルというキャラクターをさらに発展させていきたいと願っていましたが、20時間の映画を作るわけにはいかなかったので、続編という形で継続できたらいいですね。これはあくまで理想ですが」と続編への意欲をのぞかせた。
一方、もう二度と監督とは一緒に仕事をしたくないと語っていたアデルは、続編への続投の意思を問われると笑いながら、「納得のいく脚本があれば戻るつもりはあるわよ。誰にもアデルの今後はわからないけど、皆がアデルの今後が見たいって思うなら、やってもいいわ」と回答。それに「次回作で、君を起用するとは言ってないよ」とケシシュ監督が笑って反撃する場面も。監督と主演俳優らが相思相愛の他の記者会見と比べると、緊張した空気が流れることも多かった記者会見だったが、アデルは、ケシシュ監督こそが自分を一躍スターダムにのし上げてくれた人物であることについては、しっかり認識しているようだ。
半開きの口やくるくると変わる独特の表情で記者会見に臨んだアデルは、まさに劇中のアデルそのもの。アデルだけでなく、ケイト・モスを彷彿させるレア・セドゥのセクシーボディと体当たりの演技も、もちろん必見!アデルにはオスカーノミネートの噂もあるようだが、過激な役だけに、アカデミー会員の反応も楽しみだ。【取材・文/NY在住JUNKO】