鈴木京香&剛力彩芽の“凄味のある美しさ”に三谷監督も驚き!
あらゆる分野で数々のヒット作を送り出してきた三谷幸喜監督。『ステキな金縛り』(11)以来2年ぶりの新作『清須会議』(11月9日公開)は、自身による書き下ろし小説を原作とした初の歴史ものとなった。本作誕生の舞台裏など、意外なエピソードを監督に語ってもらった。
本作の題材となっている“清須会議”のことを知ったのはなんと小学4年生のときだった。「幼い頃から歴史が好きで大河ドラマなども見ていたのですが、僕の母方の伯父が「戦国武将にみる人間学~」みたいなタイトルのビジネス書を読んでて、面白そうだなぁと思って読んでみたら清須会議のことが出ていたんです。10才の時のことだから、42年間熟成させたっていうね。別にずっと考えていたわけじゃないですよ(笑)」。
映画化もされた『12人の優しい日本人』や『ステキな金縛り』など、三谷作品には会議や裁判といったテーマが多い。「理由はわからないのですが、話し合いとか裁判というものがすごく好きなんです。小学校の学級会とかも大好きで。演劇的だったり、ドラマ性を感じていたのだと思います。でも、戦国時代の話を読んだり見たりしても、あんまり清須会議がフィーチャーされることがなかったから、じゃあ、やってみようかと」。
自身の小説を映画化したものだが、小説を書くことの難しさを感じると同時に、得たものも大きかったという。「いざ書いてみると、小説ってものすごく難しくて。『司馬遼太郎みたいに書きたい』なんて変に考えちゃったもんだから(笑) キャラクターや設定のディテールをいざ書こうと思ったらわからないし、わかったところでどれだけ描写したらいいのかもわからない。シナリオのいいところは人物描写はいらなくて『座っている柴田勝家』って書くだけでよくて、あとは撮影現場でスタッフと一緒に作り上げていけるから楽なんですよね(笑) ただ今回は、小説を先に書いていたことでそれぞれの局面の心情が具体的に整理されて、現場で俳優さんに芝居をつけたときにすごく役に立ちました」。
歴史ファンならではの登場キャラクターへのこだわりもそうとうなもの。「信長の手紙の中にハゲネズミって言葉が出ているから、秀吉の顔は限りなくハゲネズミに近づけようとしたり、織田家の一族は全員鼻を大きくして、カツラもリアルに生え際を後ろに持っていこうとか。鈴木京香さんが演じたお市様は眉がなくてお歯黒で怖いけど、同時に美しさが見えるといいなと思いました。内面からの思いが顔に出て、“凄味のある美しさ”まで行けたかなと思います。だから逆に、演技していないときの京香さんがあのメイクで『おはようございます!』って入ってくると怖いんだけど、お市様になった途端に、それが成立するんですよね(笑)」。
劇中では出演シーンの少ない織田信長だが、強烈な存在感を発揮している。演じている篠井英介は大学の先輩で、三谷監督との出会いも強烈だった。「大学に入学した日にキャンパスを歩いていたら篠井英介先輩を目撃しまして、『なんて信長に似ている人なんだ!』と思ったんですよ。とにかく肖像画に似ているし、信長の持っているカリスマ性を感じて、いつか信長役を演じてほしいなと思っていました。これも大学に入ったときだから18歳…、だから30年以上温めていたんですね。本作のすべてを支配するのは信長の存在だから、一番高価な衣装でメイクも限りなく信長に近づけてもらいました。出番は少ないんだけれども一番強烈な印象を残すような存在にしようと思いました」。
前述したお市様役の鈴木京香同様に強烈な印象を残すのが、武田信玄の娘・松姫を演じた剛力彩芽。「物語のクライマックスで笑顔を見せるんですけど、眉がなくてお歯黒で。既に怖いんですけど、顔を上げたときの表情とか上げるタイミングや角度とかが抜群でした。『え、あれが剛力さん!?』っていうようなすごい表情になって、ぜひスクリーンで確認して欲しいです」。歴史マニアならではのこだわりをもって完成させた本作は、これまでの三谷監督作を超える強烈なキャラクターの共演がとにかく楽しい。歴史に疎い人でも身構えずに楽しんでほしいエンターテインメント作だ。【聞き手/金原由佳、構成・文/トライワークス】