“首長竜”はこうして生まれた!黒沢清監督があのVFXシーンを徹底解説

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“首長竜”はこうして生まれた!黒沢清監督があのVFXシーンを徹底解説

佐藤健&綾瀬はるかのW主演でも注目を集めた新感覚ミステリー『リアル 完全なる首長竜の日』(13)のBlu-ray&DVDが、12月18日(水)に発売される。劇場公開時、現実と仮想が交錯する独特の映像世界が話題を呼んだ本作だが、今回スペシャル・エディション版の映像特典には、VFXスーパーバイザーを務めた浅野秀二氏と黒沢清監督による対談をはじめ、VFXで再現した“首長竜”の制作過程を追った映像を収録。熱狂的なファンも多い“クロサワワールド”の秘密に迫るべく、この度、浅野氏と黒沢監督の対談を独占取材した。

ちなみに黒沢監督と浅野氏は、もともと立教大学時代の先輩・後輩という間柄。黒沢監督のデビュー作『神田川淫乱戦争』(83)や『ドレミファ娘の血は騒ぐ』(85)では製作助手を務めていた浅野氏が、『回路』(00)でCGを担当し、以降、黒沢作品にはVFXスーパーバイザーとして数多くタッグを組んできた。その最新作が『リアル 完全なる首長竜の日』となる。

『リアル~』について、「原作があることも含めて、1カット、1シーンなんか変……という感じにしたい」と考える過程のなかで、VFXの使用は自然な流れで出てきたという黒沢監督。それを受けた浅野は、原作にも登場する“センシング”や“フィロソフィカルゾンビ”の映像表現を課題として考えたことに加え、「カウンターパンチじゃないですけどアッパーカットを食らったような感覚」を覚えたのが“首長竜”の登場だと語る。

脚本を読んだ浅野は、「今あるデジタル技術の全てを使って投入しないと表現できない」と感じたという。更に本作で登場する“首長竜”は陸地を歩く描写がある。文献では“首長竜”が陸地を歩くことはまず無いのが定説のため、「“首長竜”のリアルさとフィクションをどういう風に同居させたらいいのか、CGで実現させること以前に迷った」のだとか。

そして、リアルとフィクションを同居させた“首長竜”の誕生にあたり、試行錯誤が重ねられた。質感に関しては、水生哺乳類のカバを参考にすることがすんなり決まったものの、難関だったのが顔だという。黒沢監督は、「“首長竜”は全体だとなんとなくイメージできるけど、顔はすごく曖昧。ティラノザウルスとか凄くはっきりしているんですけど、(首長竜は)あまりみんなイメージできてない」という思いがあり、「これが“首長竜”だ」という顔を打ち出すための試作が続けられた。特に、その顔のなかで大変だったのは目。“首長竜”は爬虫類だが、ワニの目とカメの目では大分違う。CGデザイナーが出したプランを、撮影中の黒沢監督が確認して宿題を受け取り、またそれを直すという作業が1週間ぐらい続けられたそうだが、最終的に、監督が八丈島のロケ移動中の飛行機で見つけた機内誌に掲載されていた小象の目が参考となり創られたのだとか。

また、陸に上がる“首長竜”を制作するうえで考えられたのが形状だ。CGで何でもできるがリアルに本当にそういう生物がいると思わせるためには説得力が必要と考えた浅野氏。制作するアニメーターが自ら“首長竜”のような格好をして動いてみたり、ビデオに撮ってどこの筋肉が動くのかとかチェックを重ね、骨格から考えて作られたという。

そうした“首長竜”だけでなくこれまでの黒沢作品で最もVFXが駆使された本作。最後に2人に『リアル』にてVFXが成し遂げたものについて聞いてみた。黒沢監督は「本作は人の意識のなかに入る一種のファンタジー。そういう世界をどう表現するのか、日本映画で可能なのか、そういうところが最初からチャレンジでした。こういう物語も全く可能だってことを証明できた。それはひとえにVFXがあったからこそですね」と語り、浅野氏は「脚本を読んでこれは面白いなと俄然やる気になりましたが、お話としてはものすごく複雑だなと思っていました。VFXがこの映画にとって“わかりやすさ”として助けられれば良かったという感じで、自分としては上手くいった気がします」と語ってくれた。そしてお2人で次やりたいことを伺うと、黒沢監督は「いつか“モンスター”もの、それこそエイリアンとか怪物が人間を襲うっていうシンプルな映画やりたいんですけどね」と語り、対談を締めくくった。

『リアル~完全なる首長竜の日~』(発売元:TBS/アミューズソフト)は12月4日(水)レンタル&amazon限定版先行発売。12月18日(水)Blu-ray&DVD発売。【Movie Walker】



■『リアル ~完全なる首長竜の日~』12月18日(水)Blu-ray&DVD発売
スタンダード・エディション<1枚組> 
DVD:3,027円(税込) Blu-ray:3,990円(税込)
発売元:TBS/アミューズソフト
(C)2013「リアル~完全なる首長竜の日~」製作委員会

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