前田敦子、AKB48卒業後に「モラトリアムが来てるのかも」と思っていた!

インタビュー

前田敦子、AKB48卒業後に「モラトリアムが来てるのかも」と思っていた!

“女優”という肩書きもすっかり定着してきた前田敦子が、『リンダ リンダ リンダ』(05)や『マイ・バック・ページ』(11)で知られる山下敦弘監督とタッグを組んだ映画『もらとりあむタマ子』(11月23日公開)。AKB48の中心的メンバーとして“遠い存在”だった前田が、親近感たっぷりのダメ人間・タマ子を演じることでも話題となっている本作。互いに信頼を寄せる前田と山下監督がこの最新作について語ってくれた。

「AKBを卒業後の1か月半ぐらいは『いまモラトリアムが来てるのかも』って思っていたんですけど、よく考えると普通に日常だったんですよね。ちょっとしたお休みをもらっていただけで(笑)」と振り返る前田。モラトリアムに陥る余裕もなかった彼女だが、就職活動もせず、ダラダラと日々を過ごす“実家依存”のタマ子について、意外にも共感できる部分があるという。「この映画はタマ子のダメな時期を描いているだけで、ああいう瞬間は誰にでもあると思うんですよ。何をやっても全然ダメで、『いまの自分、ヤバっ!』ってなる瞬間は」。

一方、『苦役列車』(12)に続き、再び前田とタッグを組むことになった山下監督。「『苦役列車』の時は、あっちゃんはちょっとゲストな感じがあったんですよ。その点、今回は主人公なので、やりがいもある。脚本で参加している向井(康介)にも『前田敦子、おもしろいよ』って言いたかった(笑)」。過去の作品でも、愛おしいダメ人間たちを描いてきた山下監督は、「あっちゃんは全部ひっくるめておもしろいんですよ。芝居はもちろんですけど、舞台挨拶とか、取材とかで会う時の“本人”がおもしろかったから、タマ子というキャラクターが出来上がったっていうのはあります」と、素顔の前田本人を通してタマ子の輪郭が完成したと明かした。

山下監督は女優としての前田敦子をどのように評価しているのだろうか?「僕が思うのは、あっちゃんは10言わなくても、1か2ぐらいで演じた方が良いということ。あとの8、9は勝手に埋めてくれるような気がする。彼女は持っているものを出してくれた方が魅力的なので、あまり言わない方がいい女優さんだなっていう印象です。自分の想像したものと違うおもしろさがあるんですよね」と、監督として“前田敦子”を楽しんでいる様子だった。

これに対して前田は、山下監督のことを「憧れの監督」だと公言している。「私が邦画にすごく憧れを抱いたのは、監督の『天然コケッコー』(07)が最初なんですよ。同世代の子たちがキラキラしてて『羨ましい!』って思いました」と感情をストレートに表現。「監督の他の作品を観ても、憧れは全然消えなかった。私の本当に好きな監督さんなんだというのがわかりました。そしたら、『苦役列車』の直後に『もらとりあむタマ子』じゃないですか…。私はただの幸せ者ですね(笑)」。

本作を鑑賞すれば、どうしても期待してしまうのは2人の次回作。「具体的なキャラクターは浮かばないですけど、『苦役列車』も『もらとりあむタマ子』も、あっちゃんに対して恋愛的な要素は入れてない。だから、次やるとしたら恋愛映画…なんですかね。僕自身も恋愛映画を撮ったことがないので、それはチャレンジになると思います(笑)」。これを聞いた前田は「えー(笑)。私も恋愛ものは経験がないので、恥ずかしいです」と言いながらも笑顔でうなずいていた。

また、最後に山下監督から「もし『もらとりあむタマ子』を人に説明するんだったら、『前田敦子を見ろ!』っていう映画ですね。彼女のいろんな表情を撮りたいという狙いでやったので、ジャンルで言うと“前田敦子もの”です(笑)」とのコメントが。「普通、映画では見せないところ、カットしてる部分、ドラマとドラマの隙間だけを描いている感じもある。だからこの映画は“隙間映画”とも言えますね(笑)」。この“隙間映画”という表現には、隣で聞いていた前田も納得しきり。気心の知れた2人は、終始リラックスした表情のまま、インタビューを終えた。

『もらとりあむタマ子』は第18回釜山国際映画祭にも出品され、女優として海外映画祭への初参加を果たした前田。AKB48を卒業し、1年以上が経過したいま、“女優・前田敦子”の真価の問われる1本として、タマ子の行く末に注目してみてはいかがだろうか? 【取材・文/トライワークス】

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