極上のミステリーに挑戦!巨匠の新作を攻略するために知っておきたい3人の女性

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極上のミステリーに挑戦!巨匠の新作を攻略するために知っておきたい3人の女性

『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)『海の上のピアニスト』(99)のジュゼッペ・トルナトーレ監督が手掛けた極上のミステリー『鑑定士と顔のない依頼人』がいよいよ12月13日(金)に公開される。本作は、イタリアのアカデミー賞であるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で作品賞、監督賞、音楽賞をはじめ6部門に輝いた話題作だが、映画を見れば、その巧みなストーリーテリングと衝撃な結末にうならされる。巧妙な伏線が張られ、ミステリー好きでも謎解きはかなり困難を極めると思われるので、是非、見る前にそのヒントをチェックしてみてほしい。

ストーリーとしては、ジェフリー・ラッシュ扮する人間嫌いの初老の美術競売人ヴァージルが、若い女性の依頼人クレアから、家具や絵画の鑑定を依頼される。彼女との連絡手段は電話のみで、屋敷に呼ばれても、壁越しでしか話してもらえない。やがて、彼女が27歳で、屋敷から出られない“広場恐怖症”という病気らしいことが判明。なんと彼女は15歳の時から一切外出をしていないのだという。クレアとやりとりをしていくうちに、少しずつ惹かれていくヴァージル。謎が謎を呼び、やがて衝撃の事実が明かされる。

本作には、伏線が満載なので、見終わった後、もう一度リピートしたくなることは間違いなし。詳しい内容については触れられないが、どうせなら、映画を見る前に、手探りでも良いからヒントをつかんでおきたい。そんなあなたは、この3人の女性にご注目!

まずは、謎の女性、クレアである。彼女の職業は物書きなのだが、果たして人と接することなく、その職業が成り立つのだろうか?通常のミステリーなら、“顔のない依頼人”である彼女の素顔は全く観客にも知らされず、クライマックスになってようやく顔を出す、という流れがありがちだと思うが、クレアは途中でその美貌を明かす。そこには、もちろんちゃんと意味があり、人間嫌いだったヴァージルが、彼女と直接交流することで心の鉄壁を砕かれていく過程が見ものである。

そして、もうひとりの女性が、カフェにいる記憶力が異常に良い女だ。ずっと彼女が数字をぶつぶつとつぶやいているが、この内容が謎解きの重要なカギとなる。最後に、もうひとり紹介したいのが、クレアの屋敷に置かれた、絵画の中のバレリーナだ。正確に言えば、この絵画そのものなのだが、この小道具の存在が、物語の結末を締めくくる上で、重要な役割を果たす。

とにかく、熟達したトルナトーレ監督の演出に、改めて感心させられる本作。言わずもがな、長年タッグを組んできたエンニオ・モリコーネの音楽も、物語を一層ドラマティックに縁取っている点も素晴らしい。でも、見終わった後、最大の衝撃は、本作が単なる謎解きのミステリーではなく、実は、切ないラブストーリーだという点にあるのかもしれない。

ファム・ファタールに翻弄されていくヴァージルに扮した名優ジェフリー・ラッシュの熱演…彼が最後に見せる表情を見て、あなたはどんな印象を受けるだろうか?見終わってから、余韻をかみしめたくなる味わい深い作品だ。【文/山崎伸子】

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