“役者”水嶋ヒロ!どこまでもストイックな理由とは?
枢やなの大人気コミックの実写映画化『黒執事』(1月18日公開)で、水嶋ヒロが『BECK』(10)以来3年ぶりにスクリーンに帰ってきた!演じたのは、主人公の冷酷な悪魔の執事セバスチャン役。水嶋は役作りで体重を50kg台まで落とし、鍛えぬいた体で華麗なアクションを披露した。水嶋に単独インタビューし、プロデューサーとしても関わった『黒執事』の魅力について語ってもらった。
映画版は、オリジナルストーリーで展開される。完璧な執事・セバスチャンが、男装の令嬢として生きる巨大企業ファントムの若き総帥・幻蜂清玄(汐璃)(剛力彩芽)と契約し、2人で怪事件に挑む。
本作のオファーは、松橋真三プロデューサーから入ったが、何度も断り続けたそうだ。「理由はいくつかありますが、いちばん大きかったのは、僕がこれまで何作か漫画の実写化作品を経験していて、それがどれだけ大変なことかわかっていたからでしょう。『黒執事』は僕が経験した役のなかでもいちばんハードルが高く、一番大切にされているキャラクターだからこそ演じるのは厳しいと思いました」。その後、製作に関わることになり、続いて出演も決意。水嶋は、本名の齋藤智裕として共同プロデューサーとしてもクレジットされている。「両方を経験して改めて思ったことは、自分は前に出るよりも裏方の仕事をして、作り上げた土台の上で輝く役者さんたちの姿を見る方が好きなんだなということでした」。
もちろんやるからには、アクションの訓練だけではなく、所作や佇まいなども入念に役作りをしていった。「ビジュアルを作っていくうえで少し参考にできる要素があると思ったのは、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のトム・クルーズたちです。また、極力まばたきをしないように取り組みました。大きなスクリーンでお客さんが見た時、僕がまばたきを一切しないでいると、目が少しでも動いただけで、お客様がいろんな情報を受け取れるし、悪魔の役なので、そういった違和感を作ることでもプラスになるだろうと思いました。僕は元々ドライアイなので、きつい作業ではありましたが」。
役作りに徹し、ミステリアスで魅惑的なセバスチャンに成り切った水嶋。感情は決して表に出さない冷酷な悪魔ではあるが、後半でそのキャラクターが微妙に揺れるシーンがある。そのシーンについて水嶋は「あまり大げさにはしたくないし、してもいけないと思いました」と判断。「セバスチャンは、元々先回りして物事を読める人だからこそ、主人である清玄(汐璃)が思わぬ行動に出た時、少し崩れるんです。あそこからのくだりで、僕はセバスチャンらしからぬ人間のような心の動きを表現したかったので、そこまでは無機質で情をもたないキャラクターを貫きました。演じる上で、あのシーンに一番のポイントを置いていて、あのシーンを演じるために、他を計算しながらやっていたので、とても大事なシーンです」。その緊迫感あふれるシーンは、本作のハイライトなので、是非お見逃しなく!
本作で、プロデューサー兼役者として『黒執事』に関わった水嶋は、改めてもの作りの面白さを実感したと言う。「元から物語を作ることが好きでしたし、実際、公にしてないだけで、脚本を作ったりもしてきているので、引き続きそういう機会に恵まれたらチャレンジしてみたいです。役者としても、良い作品に巡り会えて、僕が必要とされれば、それは選択肢の1つになりますし、そこは以前と変わってはいないです」。
大スクリーンでセバスチャンの赤い瞳を見ると、本当に吸い込まれそうになる。そして、キレのあるアクションを見ると、改めて水嶋ヒロの身体能力の高さにうならされる。松橋プロデューサーも「水嶋ヒロなくしては、この作品の映画化はなかった」と語っていたが、それは映画を見れば納得するに違いない。【取材・文/山崎伸子】