エレン・ペイジが強い刺激を受けた女性って?『ザ・イースト』をステップに次のステージへ
「目には目を」のスローガンを掲げ、環境破壊や健康被害をもたらす大企業へ報復活動を行なう環境テロリストと挿入審査官の駆け引きを描いたサスペンス『ザ・イースト』(公開中)。エレン・ペイジはテロリスト集団<イースト>の狂信的なメンバー、イジーを演じている。
「イジーはとても恵まれた環境に生まれ、大学でも優秀な成績を修めて世の中に蔓延る問題に目を向けることなくすくすくと育ってきたお嬢さん。ところが、<イースト>の思想やリーダーのベンジー(アレキサンダー・スカルスガルド)に出会って、考え方が180度変わってしまうの」
イジー役を演じるにあたって、監督のザル・バトマングリと共同脚本・主演を務めたブリット・マーリングとミーティングを重ね、役柄を作り上げていった。
「ブリットとザルが描いた脚本にとても心を動かされたの。イジーというキャラクターもストーリーもとても興味深かったし、何より彼らが作る作品の大ファンだったから。彼らと一緒に仕事がしたい、彼らの作品に私も関わりたいっていうのが最初だったわ。『ザ・イースト』は間違いなく、私のキャリアにおける重要な一本になった。そもそも、インスピレーションを受けたり、自分に響くものがなければ、作品に関わることはないから」
エレンのような若く才能のある女優にとって、常に次に出演する作品は注目の的となる。一体、どのような基準で作品を選んでいるのだろうか。
「もちろん、私自身が好奇心を抱く題材を扱った作品に出たいと思う。私が映画で見たいと思う若い女性の役は、世間的に若い女の子はこうあるべきとか、見た目や話し方、興味の対象はこうあるべきというステレオタイプな視点で描かれていないものなの。だから、イジー役をオファーされてとても光栄だったわ。『JUNO ジュノ』のジュノも賢くておもしろくて変わっている女の子で、映画でよく描かれる女の子とは違う役だったでしょう?」
『ザ・イースト』を製作・配給したFOXサーチライト・ピクチャーズとエレン・ペイジは深い縁でつながっている。彼女の大出世作『JUNO ジュノ』(07)、そしてドリュー・バリモアが初監督を務めた『ローラーガールズ・ダイアリー』(09/北米配給のみ)を手掛けたスタジオだからだ。
「FOXサーチライトは私にとって特別なスタジオ。リスクを冒すことをいとわず、更にそのリスクが見事な形で報われる珍しいスタジオなの。フィルムメイカーたちのビジョンを支持してくれる姿勢がすばらしいわ。作り手にとって最高の環境を与えてくれるスタジオで、そういう場所で仕事ができて、とても光栄に思ってる」
『ザ・イースト』のような意欲的なインディペンデント作品に出演する傍ら、『X-MEN:フューチャー&パスト』(5月公開)といったビッグ・バジェットのハリウッド映画にも出演する。そこには、彼女自身が見てみたいと思える作品に出演するという明らかな指針が見て取れる。そして、『ザ・イースト』での経験は、ペイジを次のステップに導いた。
「いま、エヴァン・レイチェル・ウッドと共演する『Into The Forest』(原題)のプロデューサーを手掛けているの。原作を読んで映画化が決まり、今春に撮影に入る準備をしているところ。『ザ・イースト』の現場でブリットがいかにすごいプロデューサーかっていうことを見て、とても勇気づけられたわ。ブリットはもう3本もの映画でプロデューサーを務めていて、機動力や意欲を持った存在。そういう彼女の姿を見て、私自身もプロデューサーとして自信を持つことができた。『Into The Forest』の開発にとても時間がかかってしまっていることを気にしていたけれど、ブリットのやり方を見てそれもいいことなんじゃないかと思えるようになったの。それに、ブリットから友達としてアドバイスをもらえるようになったから、彼女の才能も私の味方についてくれるわ」
類は友を呼ぶではないが、『ザ・イースト』でエレン・ペイジがブリット・マーリングと出会いインスピレーションを受けたのは、必然だったのではと思わせる。ハリウッドを刺激する2人の女性クリエイターの活躍に、今後も注目だ。【取材・文/平井伊都子】