山田裕貴を井口昇監督が絶賛「良い感じで顔をくずして泣ける人」
「リアル鬼ごっこ」などの人気作家・山田悠介の同名小説の映画化『ライヴ』(5月10日公開)で、映画初主演を飾った山田裕貴。メガホンをとったのは、『ヌイグルマーZ』(公開中)などを手掛け、カルト的な人気を誇る井口昇監督だ。原作の設定を少しアレンジし、井口組ならではのパワフルな作品に仕上げられた映画版『ライヴ』。山田裕貴と井口監督にインタビューし、舞台裏について話を聞いた。
ある日、家族が誘拐され、突然、謎のデスレースに参加させられた人々の葛藤と苦闘を描く本作。原作本がレースの攻略本として劇中に出てくるというアイディアは、脚本も手掛けた井口監督が思いついたものだ。井口監督は「原作はスケールが大きくて、まともに映画にすると、10~20億円くらいかかるんです。『ライヴ』は山田悠介さんの脳内世界を描いたような作品なので。だから、デスゲームに巻き込まれた人々の群集劇という構成は活かして、映画として別のベクトルに持っていきました」と、映画化への突破口について語る。
山田も「原作を読んでから台本を読んだので、なるほど、と思いました」と感心したそうだ。「僕は、これまで経験してきたものが、戦隊物(「海賊戦隊ゴーカイジャー」) や、ドラマが多くて、映画は今回でまだ3本目だったので、また、違った楽しみがあるなあとは感じました」。
山田が演じた主人公・田村直人は、原作と同じ名前だが、性格は異なると、井口監督は語る。「原作の直人はとても親思いの良い子なんです。でも、映画はひとつの成長物語にしたかった。だから、全然違う性格からスタートし、最後に良い子の直人にシンクロしていくようにしました。山田さんがそこを上手く演じてくれた。難しいお題だったと思います。入口としては、嫌なヤツだけど、見ていくうちにだんだん共感し、最後は応援したくなるようなキャラクターになりました」。
山田も「僕も、どうリアルなキャラクターにするかと考えながらやっていきました」と言う。「それで、今回は、演じよう演じようとするよりも、にじみ出そうと考えた方が良いのかなと思いました。僕は、最初にやったのが戦隊ものだったし、漫画原作の作品もやらせてもらっているので、それをいかに人間っぽいと思わせるかというのがいつもテーマなんです」。
井口監督は、山田について「表情の振り幅がすごくある人」と称賛する。「良い感じで顔をくずして泣ける人だなと。見ていて『こいつ、良いヤツだな』という人柄がお芝居ににじみ出てくるんです。迷いながらも頑張ろうとしている姿がキュートでした。あと、自分がどう撮られているかというよりは、どう役としているかってことを気にするタイプ。若手の役者さんって、ちょっと格好つけちゃう人もいるんですが、それが全然なくて、好感が持てました」。
山田は「格好つけてるっていうことを、いちばん言われたくないので。どんな姿になっても、どんな顔になっていても、僕は良いんです。鼻水がたれていようが何でもいいから、その役の気持ちが、お客さんに一番ストレートに伝わればいちばん良いと思っていますし」と言うと、井口監督も「本当にそう思いました」とうなずく。
最後に、2人が『ライヴ』の見どころをアピール。まずは井口監督から。「大人が見る山田悠介原作のものを作りたかった。それと同時に、今までのバイオレンス描写も活かしながら、スプラッターやホラー映画を見ないお客さんにも見てほしいと思いました。また、僕ももう40代中盤の親世代になってきたので、今の自分が思う若者像、若者へのメッセージみたいな映画になったら良いなと」。
山田は「伝えたいことがいっぱいあります」と言う。「成長って毎秒ごとにしていると思う。でも、何かきっかけがないと気づけないことって、世の中にはたくさんあるんです。自分も誰かのひと言で変わったりとかするし、それはたぶん、生きている人みんなに共通してあることだとも思います。だから、人間は変われるんだよってことを伝えられたらなと。自分がちょっと変化できるきっかけになれば良いですね。また、個人的には初主演をやらせていただき、名前がいちばん上に出てくるのがうれしかったです。たくさんの人に見てほしいです」。【取材・文/山崎伸子】