山田孝之の目に映る菅田将暉とは?『闇金ウシジマくん』で初共演

インタビュー

山田孝之の目に映る菅田将暉とは?『闇金ウシジマくん』で初共演

伝説の闇金・ウシジマを中心に、債務者たちの末路を描く人気シリーズが『闇金ウシジマくん Part2』となってスクリーンに帰ってくる(5月16日公開)。2010年のドラマ化より、ウシジマ役を演じ続けている山田孝之の圧倒的存在感はもちろん、菅田将暉を始めとする大注目の若手キャスト陣が集結。スクリーンのあちこちでパワーが弾け飛び、現代社会の闇、そして人間の可笑しみを映し出す濃厚な人間ドラマに仕上がった。そこで山田と菅田を直撃。実力派俳優として、どこか似た匂いを持つ2人に語り合ってもらった。

完成作の手応えを聞いてみると、山田は「あります」とキッパリ。「ドラマ版では短い尺でテンポ良く。さらに間口を広げるために、ギャグ要素も入れ込んで作っていますが、映画の『Part1』は、それとまた違って、引きの絵をじっくりと見せたり、ジトッとした空気感が出ていました。今回の『Part2』では、ドラマの疾走感と映画のジトッとした感じがうまくミックスされた。2つのストーリーを同時に描くことで、より群像劇感も出ましたし、純粋に、見事だなと思いました」。

「2つのストーリー」というように、本作は、原作コミックの「ヤンキーくん編」と「ホストくん編」をもとに構成。菅田が演じるのは、借金を背負わされ、ウシジマの事務所で働くことになるヤンキーのマサル役だ。菅田は「撮影の初日から、ガムテープでぐるぐる巻きにされたんです」と苦笑い。原作ファンでもあるという彼だが、マサル役に関しては、こう分析する。「『グッとこないクズ』にしたいと思ったんです。後先も考えずに、その場その場を話術で乗り切ろうとする。そうやって、いつの間にか物語が展開していけば良いなと思いました。必死で真面目なところが、端から見ると滑稽に見えるんじゃないかな」。

さらに「ウシジマくんは、歩いてくるだけでも威圧感があるし、絶対に目で追ってしまうようなところがあって。その隙のなさが、ウシジマくんの怖さなのかなと思います」と、やはりウシジマの存在感には驚いた様子。

そのウシジマは、山田にとって長年、演じ続けるキャラクターとなった。山田は「ウシジマという一人のキャラクターを、細部まで磨き上げていくことができる。その作業が楽しいんです」とウシジマを演じる面白みを吐露。「ウシジマはやっぱり特殊で、物体のようなキャラクター。僕も彼のことを人としてしっかりと中身を作っていないし、過去を探ろうともしていない。中身は空洞にしておいて、“外側”を作るというか。『よーい、スタート』がかかった時に、作り上げてきた“外側”をかぶるような感覚なんです」。

続けて、「そうしておくことで、新しいものを付け足すことも、無駄なものを省くこともできる。そして、どんどんウシジマが完成していく。この作業は、ウシジマというキャラクターだからこそできることですね。きっと、本作がソフト化されてウシジマを見直した時には、『まだここの詰めが甘いな』ということが出てくると思うんです」と、彼にとってウシジマ役は、演じても演じてもまだ先があると思わせてくれるキャラクターのようだ。

菅田は「こういう話を聞ける人って、あまりいないですよね」と山田の熱のこもった話に、感心しきり。『共喰い』(13)では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後も出演作が相次いでいる彼だが、今の状況について聞くと、「いろいろなことをさせてもらって、ありがたい」と誠実な言葉がこぼれた。「『共喰い』に出た頃から、自分の見え方がどんどん変化していけば面白いなと思ってやっていて。常に『次はこれを超えるようなものを』と積み重ねていけば、いろいろな作品に没頭できるんじゃないかと思っています」。

では、役者としての醍醐味を感じる瞬間は?「普段生きているだけでは、ありえない体験ができますから。どちらかと言うと、僕は真面目に生きてきた方なので、悪いことと言ったら宿題を忘れるくらいのもの(笑)。マサルのようにバイクを盗んで、ガムテープで縛られたこともありません。また出来上がったものも、見てくださる方によって感想も違ったりするので、いろいろな感性に触れられて面白いです」。

こう語ってくれた菅田は今、21歳。山田は「僕が21歳の時というと、『電車男』(05)をやっていた頃」と当時を述懐。「もちろん、俳優をやっていて楽しいこともありましたが、まだまだ必死で。言われたことを精一杯やるだけでした。だから、うらやましいですよ。楽しそうで」と、菅田をチラリ。菅田が「僕も必死ですよ!」と言うと、「こうやっていろいろな役ができたり、良い経験を早いうちからできている感じがする」と山田。男同士の確かな信頼感が漂う。

若手俳優にとって憧れの存在となった山田だが、「僕は今、役者を15年続けていますが、そこである程度のキャリア、身につけてきた実力、知り合った人とのコネクションなどいろいろなものが混ざり合って、今はただ待っているだけでなく、もっと早い段階から作品創りに入っていけるようになって。それはすごく楽しいですね」と役者としての楽しみは広がり続けている。

「ちょっと働き過ぎかな」と苦笑いを浮かべる山田だが、それも「一つの作品が終わって、すぐに次の作品が始まると、役柄を詰める時間がもう少し欲しかったりするんですよね」と、妥協を許さない彼だからこその一言。俳優道にどっぷりと浸かり、さらに進化を遂げる山田孝之。そして、俳優道を確かな足取りで歩き始めた菅田将暉。まずはエネルギッシュな本作で、2人の共演をたっぷりと堪能してほしい。【取材・文/成田おり枝】

作品情報へ