第67回カンヌ国際映画祭で金城武に『The Crossing』について直撃取材!

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第67回カンヌ国際映画祭で金城武に『The Crossing』について直撃取材!

ガンを克服したジョン・ウー監督の4年がかりの新作『The Crossing』がポスト・プロダクション中である。現在開催中の第67回カンヌ国際映画祭では、監督とキャストによるプロモーションが行われた。

『The Crossing』の舞台は、第二次世界大戦直後の中国と台湾。中国の国共内戦の時代である。台湾人の青年・金城武は日本占領下の台湾に生まれ、日本語で教育を受けた、たおやかな日本人女性・長澤まさみと恋に落ちる。しかし戦争が始まり、日本軍の軍医として中国大陸に出征することになってしまう。国共内戦の中、引き裂かれた3組の恋人たちの姿を金城が演じる青年を軸に描き出していく大作になる予定だ。

ジョン・ウー曰く「『アラビアのロレンス』(62)みたいな、アクションとドラマとラブ・ストーリーが渾然一体となった作品が作りたい」そうな。アクション派監督としてハリウッドでも活躍するウーだが、本人はロマンチストなのだそうで、『シェルブールの雨傘』(64)の大ファンなのだという。戦争によって引き裂かれる恋人たち。なるほど。

中国・韓国・日本・台湾のスターが集まる汎東アジア的な本作。金城武への独占インタビューを敢行した。

――ジョン・ウー監督とは「レッド・クリフ」で組んでいますが、今回の役も孔明のような超越した存在なのですか?

「いや、むしろ流されざるを得ないことをあきらめるような人です。植民地に生まれ、言葉と名前を奪われて育ち、さらに戦争が始まると“日本人として”戦争に行かなくてはいけない。それも仕方がないと思っている男です。さらに彼は医者として戦地に赴くわけですから、非常に複雑な思いがあるわけです」

――植民地だった台湾で日本人女性と恋に落ちるわけですね。

「そうです」

――と、いうことは中国に渡ってからチャン・ツィイーさんが演じる女性とまた恋に落ちるのですか?

「そういうわけではなくて、三組のカップルがいてそれぞれ戦争によって引き離されるわけです。それで、その三組の話が並行して進んで行く。ときにその物語が本人たちは知らぬ間に交差していたり、すれ違ったりするのです。そして、僕の役だけが全員と関わる、というか存在する、という構成なんです。おぉ、だから“crossing”なのか、と今ごろ感心したりして(笑)」

「脚本を貰って読んだ時、その構成の素晴らしさにぞわぞわっとしました。よく見てみると、台湾のワン・フェイ・リンという『グリーン・デスティニー』(00)を書いた脚本家の名前が載っている。これは!!と思いましたね。この本の中で僕の演じる軍医だけが他の人たちと会っていく、そのためには彼は台湾語・日本語・中国語が話せなくてはいけない。ということは、俺か!!と思って、またウー監督がチャンスをくれたんだなと感動しました」

「僕がここにいられるのは、チャンスをくれた人たちのおかげだと思います。まずウォン・カーウァイ監督の作品に出して貰って、映画ってこんなに面白いものなんだ、その中にいるには役者という位置があるんだと思い、それ以来、映画を中心に考えてきました。その次に大きなチャンスをくれたのがチャン・イーモウ監督の『LOVERS』(04)ですよね。初めてカンヌにも来られて、それは僕の力じゃなくて監督の力だし、スターになったチャン・ツィイーのおかげでもあるんです。そしてウー監督がまた。再度チャンスをくれた。本当に僕は恵まれていると思います」

「実は今まで、映画で台湾語で芝居をしたことがなかったんでそれもうれしいですね。常に話してきたのは台湾語ですから。いつもならば方言を学んだり、スタントを訓練する準備が必要ですが今回はそんな予習がいらなかったのでやりやすい現場でした」

――今回長澤まさみさんと共演していますが、初めての国際的な現場に挑む心得など伝授したのでしょうか?

「台湾で仕事をしたこともあるから全くの初めてというわけではないはずです。ただジョン・ウー監督の演出はユニークで独特なので、『今、監督の言いたかったのはこういうことなんだよ』と通訳したりしました。通訳ということでは、いろいろな言葉が出てくる現場なので通訳するのを待つのがまどろっこしいときなど、『いいよ、俺が通訳するから』なんてこともありましたね」

今や東アジアきっての映画スターとなった金城武。10年前に共演したツィイー曰く「成熟した」大人の俳優として、カンヌに戻って来た。その姿をぜひ日本でも見せて欲しいものだ。【シネマアナリスト/まつかわゆま】

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