今、最も気になる美人女優・高梨臨。憧れから挫折、国際派女優までの道のりとは?
NHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』では、ヒロインの同級生役を好演。『わたしのハワイの歩きかた』(6月14日公開)をはじめ、カラーのまったく違う作品で新境地を切り開くなど、映画界でも引っ張りだこ。今、最も気になる女優のひとりが、高梨臨だ。辻仁成が脚本・監督を務めた『醒めながら見る夢』(公開中)では、ヒロインに抜擢された高梨。2014年の大躍進までの道のりを振り返ってもらうと、彼女が輝く秘訣が見えてきた。
辻が作・演出を務めた舞台を映画化した『醒めながら見る夢』。人気演出家の優児(堂珍)が、看板女優だった恋人の亜紀(高梨)と、その妹(石橋杏奈)との関係に悩みながら、真実の愛を探し求めていく物語だ。演じた亜紀役は「ものすごく難しい役だった」と彼女。「亜紀を演じる上で大切にしたのは、自我を捨てること。こういう役は、演じたことがありませんね」と、辻ワールドの打ち出すヒロイン役は新たなチャレンジとなったようだ。
確かなメッセージ性を持った作品に仕上がったが、「登場人物たちみんなが悩みを抱えていて、不完全な人間の群像劇。辻監督ならではの芸術性も楽しんでもらえると思うし、京都がとても綺麗に映し出されていて、日本の美しさも感じてもらえると思う。私は、浴衣姿も披露しているんですよ」とアピールする。
京都の撮影は、さぞかし暑かったのではないだろうか?「撮影に入る前に、『真夏の京都なんて、すごく暑いんだろうなぁ』と恐れていたんです(笑)。確かにすっごく暑かったんですが、行ってみたらそれが楽しくて。せっかく夏の京都に来たんだからと、夜な夜な、納涼床に飲みに行っていたんです」と嬉しそうに語るが、なんと納涼床にはひとりで来店していたのだとか。
「私、ひとりで行動するのって平気なんです。ヒョイッと行っちゃうんです」とニッコリ。可憐な見た目とは裏腹、この潔さが何とも魅力的だ。近年、巨匠アッバス・キアロスタミ監督に見い出されるなど、インパクトのある役柄を手にしている彼女。デビュー当初はアイドルとしてそのキャリアをスタートさせた。「憧れから、芸能界のお仕事を始めて。徐々に女優のお仕事をさせていただくようになったんですが、オーディションに全然受からない時期もありましたし、『才能ないな』と思って。このお仕事を辞めたいと思う時もありました」と胸の内を吐露。
「周りの人はすごくできるのに、自分は全然、役柄の気持ちがわからないとか、周りを気にしている時もあって。もうそうなると、どうしたらいいかわからなくなっちゃって」と苦笑い。迷い道のさなかにあった彼女を救ってくれたのが、映画『GOTH』(08)との出会いだった。「(高橋玄)監督に毎日、怒られていたんです(笑)。悔しくて、監督の前では泣かないと決めていましたが、帰り道では毎日泣いていて。でもだんだん、『できると思っているから言っているんだ』と声をかけてもらえるようになったり、ちょっとした一言に励まされるようになって、頑張ろうと思ったんです」。
「初めて主演をやらせていただいたという責任感もできましたし、監督に毎日しごかれて、『GOTH』の撮影が終わってみたら、女優への思いが強くなっていた。あれ以来、一度も女優を辞めたいと思ったことはありません」と強い眼差しを見せる。「それからは、お仕事が決まるようになって、キアロスタミ監督『ライク・サムワン・イン・ラブ』(12)のオーディションにも受かって。『GOTH』のおかげで成長できたのかなと思います。本当に大きな出会いでした」。大躍進までの道のりは、決して平坦ではなかった。キアロスタミ監督作では「当日行ってみないと、何をやらされるのかわからない」という現場も経験。歩くのも躊躇するような道を、手探りで、体当たりで突き進んできた。
女優業の醍醐味を聞いてみると、「ひとつの出会いが、次につながっていくのが楽しい」と目を輝かす。続けて「でも実は私、人付き合いも悪いし、すごい閉鎖的な人間だったんですよ」と本音を告白。「人のつながりの大切さに気づいて、ちょっとずつ踏み出して、オープンに人と接するようにしてみたんです。そうしたら、一度ご一緒した方から、また声をかけていただく機会も多くなった。そうやってつながっていくのが楽しいし、またお会いできるように成長しよう!と思うようになりました」。
潔くありながら、ひたむき。挫折を乗り越えてきた経験から、得たものは限りない。「どんな役でも、『自分には合わない』と思わないようにしている。作品は監督のものだから、どんな役であれ、監督の思うイメージに染まりたいと思っています」と彼女。真っ白なキャンバスのような女優・高梨臨が、ますます楽しみで仕方ない。【取材・文/成田おり枝】
ヘアメイク:佐鳥麻子(Nestation)