オダギリジョー、ゴリラ専門の役者に驚く!
サーカス団のゴリラがプロ野球球団に入団し、大活躍するという韓国映画『ミスターGO!』(5月24日公開)。本作で、ゴリラを選手として獲得しようとする中日ドラゴンズのオーナー・イトウ役に扮したのが、オダギリジョーだ。個性的なボブでメガネをかけたインパクト大の出で立ちは、オダギリの発案によるものだとか。オダギリにインタビューし、本作に出演した経緯と、撮影秘話について話を聞いた。
監督は『カンナさん大成功です!』(06)のキム・ヨンファ監督。オファーを受けた理由についてオダギリはこう語る。「ゴリラが野球をする、そんなメチャメチャな題材を今の韓国映画の力を結集させて映画化するという試み自体が、面白いと思いました。今の日本映画界では挑戦すら許されない作品ですからね。これだけお金をかけて、こういう映画で勝負できる韓国の映画界の状況の良さが、うらやましかったりもしました」。
キム・ヨンファ監督との出会いは、彼が出演したカン・ジェギュ監督作『マイウェイ 12,000キロの真実』の撮影現場だった。「カン・ジェギュ監督と仲が良いので、撮影を見に来られていて。その時『今度こういう映画を撮ろうと思うんだ』と飲みながら話したのがきっかけでした」。
演じたイトウオーナーのキャラクターについても、面白がって演じたようだ。「コメディですからね。リアルに考えると、年齢的なものも含めて、中日のオーナー役を僕ができるわけがないじゃないですか。そう考えると、あまりリアルに作ってもしょうがないので、思い切って、オリジナリティのある、魅力的なオーナーに出来ればと思いました」。
海外の監督と組むことも多いオダギリだが、海外で仕事をする醍醐味についても聞いてみた。「海外って、毎日予想もつかないことが起こるんです。時には現場でケンカになったりしながらも、とにかく、自分で色んなものと戦ったり、適応したりしなきゃいけないんですね。日本の現場は、全てがスムーズで、トラブルみたいものは滅多に起きないし、気遣いもすごいじゃないですか。俳優は芝居のことだけに集中すればいい。それは幸せでとてもありがたいことだと思うんですが、なんだかそれだけだと物足りなくなってきちゃったんです」。
そう聞くと、かなり奇特なタイプに思えるが、そこもオダギリの魅力である。「海外で毎日トラブルが起こると、自分のなかでどんどんネガティブな要素が増えていくし、集中する事も難しくなる。でも、そういうものを受け止めながら、ものを作るってことが、ある時期から楽しくなっていきました。まあ、刺激が欲しくなったってことですかね。特に今回の現場は面白かったです。カメラ自体がすごいし、ひとつひとつが日本の現場では考えられないシステムを使っていました」。
さらにオダギリは、いまの韓国映画界の良さをこう語る。「韓国は、映画を自国だけで考えてないんです。ビジネスとしては中国のことを思い、技術に対してはハリウッドのことを思う。だから、ハリウッドのシステムを取り入れようとしているんでしょうね。お金の掛け方もすごかったです。たとえば球場を借りるでしょ。撮影で芝生はグチャグチャになるから、それを毎回弁償するんです。それだけでもすごいお金がかかるじゃないですか」。
本作では、ゴリラがフルCGで描かれているが、オダギリが驚いたのは、そこだけではない。「現場にゴリラ役の俳優さんがいて、その方の動き方がとにかくリアルだったんです。アメリカのゴリラ専門の俳優さんに弟子入りし、ゴリラの動きを学んで帰ってきたそうです。でも、その人は画面には残らないわけじゃないですか。その人の動きを基にCGを作るわけだから。でも確実に、その人がいないと、ゴリラは成立しないわけで。気付かないところにとんでもない努力があるんですよね」。
本作の撮影をとても楽しんだというオダギリ。「他人ごとのように楽しめた作品でした。まるでお祭りに参加するような気分でしたね」。その表情は実に晴れやかだ。是非、前代未聞のゴリラの野球映画『ミスターGO!』を劇場で観戦してほしい。【取材・文/山崎伸子】