硬派な魅力あふれる吉村界人、21歳。憧れは「松田優作さんとマイケル・ジャクソン」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
硬派な魅力あふれる吉村界人、21歳。憧れは「松田優作さんとマイケル・ジャクソン」

インタビュー

硬派な魅力あふれる吉村界人、21歳。憧れは「松田優作さんとマイケル・ジャクソン」

凛々しい眉、人を惹き付ける眼差し。一方で見せる柔らかな笑顔。ただの二枚目ではない、硬派な魅力をたたえた役者が誕生した。その男の名前は、吉村界人。若者のナイーブな心を切り取った『ポルトレ PORTRAIT』(6月7日公開)は、役者・吉村界人の誕生の瞬間に立ち会うことができる映画だ。自らの武器は「恥をさらすことができること」だという彼に、役者としての展望を聞いた。

「1年間、引きこもりをしていたんです」。本作への出演の経緯を聞くと、驚きの告白が飛び出した。「もともと役者への憧れは持っていた」というが、その気持ちを抱えたまま、一旦は大学に進学したそう。「大学に入って自分のやりたいことがよくわからなくなって、結局、大学を辞めてしまって。19歳くらいから巣ごもりをして、ずっと悶々としていました(笑)」。真面目すぎるがゆえに、悩みすぎてしまうのだろう。「苦しかったですね」と照れ笑いを見せた。

そんな時、運命的な出会いを果たす。「たまたま、インターネットでこの映画のオーディションを見つけて。『あ、これ自分だ』と思い、是非受けてみたいと思いました」。本作の主人公は、大学を中退した19歳の青年。夢や希望を見失い、日課と言えば、ポラロイドカメラで自身のポートレイトを撮ること。昼夜が逆転し、夜な夜な街をうろつく青年は、まさに当時の彼の心を映し出した存在だった。

「オーディションに行って、(内田俊太郎)監督に『これ、僕です』って言ったんです」と笑う。「この役を演じるのは僕だろうと思ったので、緊張もせず、自信を持ってそう言いました」と、どこまでも真っ直ぐ。これが吉村、そして映画にとっても奇跡的な出会いとなった。

子どもにも戻れず、どうやって大人になるのかもわからない。劇中では、彼のたたずまい、歩き方、表情から、青年のさまよう心が浮き彫りになってくる。吉村は「誰でもが通るような、20歳前後の気持ちを映している映画だと思います。青年に共感してほしいと思って演じていました」と熱を込める。そして、等身大の青年役を通して「受け身じゃダメなんだと思いました」と、気持ちも新たに。「子どもの頃は『勉強しなさい』と言われたり、学校に行ったりと、“やらされる”ことがある。でもそれが一切なくなって自由になると、ちゃんと能動的に考えないと腐ってしまうんだなというのが、よくわかりました」。

「能動的に考える」。本作は、この精神を鍛えるにはもってこいの現場となったようだ。「脚本に、ほとんど何も書いてないんです(笑)。セリフもほとんどないので、わからないところは毎回、監督に聞いて。僕から、『こうやってみても良いですか?』と聞いて、『じゃあ、1回やってみて』と言われてやってみる。いつもそんな感じでした」。

劇中の青年は、ある魅力的な女性に出会い、少しずつ変化していく。「いつだって恋は、人の力になるもの」と言う吉村だが、一番好きなシーンを聞いてみると、「僕の演じる青年がタバコを持ってきて、女性に渡すシーン」とのこと。「脚本では、女性はそのタバコを受け取ってくれないんですよ。でもずっと僕がタバコを出しっぱなしにして、『取ってほしい』という目で見ていたら、女性役の松本まりかさんも受け取ってくれて。監督もOKをくれて、心が通じたような瞬間でした。嬉しかったですね」。

映画作りの現場に飛び込み「これが自分のやりたいことだ」と実感したが、「『芝居が楽しいです』とは、まだ胸を張って言うことができない。まだまだ経験が少ないですから。ただ、確実に生活は変わりました。やることが見つかって、楽しくなりました」と表情を引き締めた。目指す俳優像を聞くと、「松田優作さんやマイケル・ジャクソンのような、説明書のいらない存在になりたい」と回答。「先日も映画のチラシ配りに街へ出ていたんですけど、僕のことも皆さん知らないし、なかなかもらってもらえなくて(笑)。僕のことを説明しなくてもわかってもらえるような、そんな存在になりたいです」。

チラシ配りも自ら買って出る。「そうやっていれば、反骨心が芽生えてくるんじゃないかと思って」と、今は役者としての心を懸命に磨いている真っ最中だ。最後に、映画の見どころを聞いてみた。「映画らしいという言い方があれば、この映画は映画らしいとか、映画っぽいとかいうところから脱却している映画です。是非、自分の生き様も見てください」。今後は『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』(11月公開予定)の公開が控える。まずは、映画と役者が運命的な出会いを果たした『ポルトレ PORTRAIT』で、吉村界人の一歩を見届けてほしい。【取材・文/成田おり枝】

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