浅野忠信、二階堂ふみとの“禁断の愛”に手応え!「ひとつになれた瞬間があった」

インタビュー

浅野忠信、二階堂ふみとの“禁断の愛”に手応え!「ひとつになれた瞬間があった」

男と女が激しく愛し合い、そこに赤い雨が降り注ぐ。なぜなら、2人は決して許されない、血塗られた禁断の愛で結ばれているから。浅野忠信と二階堂ふみが共演した『私の男』(6月14日公開)のこのワンシーンは、とにかく息を呑むほど美しく、静かなパッションに満ちている。本作に体当たりで望んだ浅野忠信にインタビューし、気になる撮影秘話を聞いた。

原作は、第138回直木賞を受賞した桜庭一樹の同名小説。浅野が演じた淳悟は、引き取った天災孤児の花(二階堂ふみ)を育てていくうちに、親子という枠を超え、互いになくてはならない存在になっていく。メガホンをとったのは『夏の終り』(13)の熊切和嘉監督だ。

浅野は、共演した二階堂ふみのことを手放しで絶賛する。「彼女は本当によく頑張っていました。あそこまで大変な役が、僕の世代や、それに近い年齢の女優さんにさえ来ることなんて、今の日本じゃほとんどありえない。たとえそういう役が来ても、本作のようなアプローチはしないと思うんです。女優なのに脱げないという人もいますので。でも、彼女は徹底的にやっていますから、あんなに信頼できる女優さんはいないと思いました。だから、僕もどんどんその世界へのめり込んでいくことができました」。

2人の絶大な信頼感は、現場ですぐに生まれたものなのだろうか。「俳優同士で感じ合うことって、けっこう簡単だったりするんです。初日のワンシーンの受け答えで、この人は自分に近いなとか、この人はこういう芝居をする人なんだと、なんとなくみんな感じるはずです。そういう意味では、最初からいけるなと思いました。僕の理想通りの人で、僕も自然とリズムをつかめるなと思いました」。

赤い雨に濡れていく2人のシーンは、本作のハイライトでもあるが、舞台裏はかなり大変だったようだ。「大きな風呂桶に大量の血のりが用意されました。最初は気を利かせて、ぬるい温度でしたが、現場で準備をしているうちに、どんどん冷めていくんです。本番の頃には、まあまあ冷たい。集中しているから気にならないんですが。でも、『もう1回!』となると、水を足すしかなくて。北海道の真冬の水道ってめちゃくちゃ冷たいんです。でも、それも含めてプラスの方向に働いたと思います(苦笑)」。

待ち時間、2人で寄り添っていたことが功を奏したようだ。「そのおかげで、ぼくとふみちゃんがひとつになれた瞬間がありました。待っている間、いちいち離れてタオルでふいたりしていると、よけいに寒いんです。すぐにいけるのならそのままいます、とずっとくっついていました。そこでふたりの時間を持ったことで、お互いをすごく感じることができたんです。出来上がった映像を見た時も、本当にひとつになるってことで、僕も妙に納得がいきましたし、良いシーンになったと思いました」。

浅野は、二階堂について「彼女は、今最も大切にされるべき女優さんだと思うし、彼女自身も自分を大切にして、彼女が歩もうとしている道を踏み外さないようにしてほしい。あの現場では、みんなが彼女に助けられていたと思います」と称え、感謝の言葉を述べる。浅野忠信と二階堂ふみ。2人とも映画を愛し、映画にも愛されている気がする。きっと本人たちもそういうシンパシーを感じたのではないだろうか。スクリーンにあふれ出している2人の情熱を、しかと受け止めてほしい。【取材・文/山崎伸子】

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