鈴木亮平、『TOKYO TRIBE』で『レ・ミゼラブル』方式の同時録音に大興奮!
『HK 変態仮面』(13)で惚れ惚れするくらいに鍛え上げた肉体美を披露した鈴木亮平。待望の園子温監督との初タッグ作『TOKYO TRIBE』(8月30日公開)では、筋骨隆々のプロレスラーのような巨体に肉体改造し、主人公の1人、メラ役に臨んだ。鈴木亮平にインタビューし、ストイックな役作りと、園監督との静かなバトルについて話を聞いた。
原作は、井上三太の人気コミック。近未来の“トーキョー”を舞台に、ストリートギャングたちが大暴れする。園監督は、本作をただのコミックの映像化作品ではなく、“バトルラップミュージカル”と題した新ジャンルの異色作に仕上げた。
メラの体作りは、『HK 変態仮面』の時と同様にストイックに敢行した鈴木。「まずは体を大きくし、そこから脂肪だけを削り取るのが変態仮面、削らず大きいままにしておくのがメラです。だから簡単でした。変態仮面の時ほどの食事制限はしなかったので。今回は、とにかくでかくいれば良かったので、食い続けていればキープできました。まあ、1日8食くらい食べるのは大変でしたが」。
ハードな肉体改造のトレーニングで、挫折しそうになったことはないのだろうか?「もちろん、トレーニングをしていて、嫌になる時はあります。でも、それを超えるだけのものが背景にあるんです。それは園さんの作品の看板を背負うこと、メラという役の大きさってところでしょうか。そこがなかったらやってないし、すぐにリバウンドしちゃいますから」。
また、鈴木は元々、ヒップホップ好きで、ラップのセリフにも大いに魅力を感じたそうだ。「好きだからこそ、中途半端にしたくなかったんです。自分ではすごく努力をしたつもりですが、やったらやったで難しくて。ただ、園さん的には、僕に格好良いラップを求めているわけではなかった。そういうのはラッパーにやらせれば良いと。初めて会った時も、園さんから『ミュージックビデオにするつもりはない』と言われました。役者のラップは、臨場感や息遣い、セリフのようにリアルな部分が欲しいってことで。それは誰もやったことがないものだったから、面白かったです」。
実際、プロのラッパーたちも大勢参加していて、それらはほとんどがアフレコだったが、鈴木たち俳優陣のラップは、映画『レ・ミゼラブル』のような同時録音で収録をした。「イヤーモニターから音楽が流れ、そのまま自分の息の読み合いのなかでのラップをする。レミゼ方式に興奮しました(笑)。しかも、オープンセットでやっているから、花火がぴゅんぴゅん飛んでいるなか、僕は裸だからワイヤレスマイクも仕込めない状態でやっていたんです。そこが園さんこだわりの臨場感ですね」。
特に刺激的だったのは、オーディションで海(カイ)役を勝ち取ったHIPHOPアーティスト・YOUNG DAISとのバトルシーンだった。「最後に、海とメラがぐるぐると回りながら、ギャラリーのなかで歌いながらアクションをするラップバトルです。あそこは体力的に相当きつくて、しかも、1カットの長回しで何度も撮りました。前日にアクション監督とも相談して、自分たちでアクションを組み立てられたことも印象深かったです。YOUNG DAISと2人で息も絶え絶えで、無理やり息を絞り出しながらやりました。やっている内に、イヤーモニターも取れ始め、リズムとラップがずれてくる。ラップにもなってなかったような気がしたんですが、終わった後に園さんがすごく満足そうにこっちへ来て『メラの今のラップはボブ・ディランだね。ずれてる感じが最高だった』と言ってくださって。本当にうれしかったです」。
園組の現場で、たくさんのものを吸収したという鈴木は、「あの現場、終わりたくなかったです」と名残惜しそうに言う。「園さんの熱を浴びて、スタッフやキャスト、みんなが向かっていく一体感がすごかった。でも、僕はまだ、園組を経験し切ってない気もするので、これ1作品で終わりたくないです。きっと、もっといろんな魅力があるだろうから、もう一度やりたいです!」。清々しい笑顔でそう語った鈴木亮平の表情が印象的だった。【取材・文/山崎伸子】