市川由衣と池松壮亮が体当たりの熱演!撮影後に市川は燃え尽きてダウン

インタビュー

市川由衣と池松壮亮が体当たりの熱演!撮影後に市川は燃え尽きてダウン

市川由衣にとって、女優として紛れもない勝負作となった『海を感じる時』(9月13日公開)。原作は、当時、現役女子高生が書いたスキャンダラスな文学とされた、中沢けいの群像新人賞受賞小説。市川にとってヒロイン・恵美子を演じるには、身も心も丸裸になる覚悟が必要だった。そんな彼女の思いをしかと受け止めた相手役が、映画やドラマで唯一無二の存在感を発揮し続けている池松壮亮だ。初共演ながら、しっかりと信頼関係を築いた市川由衣と池松壮亮の2人にインタビューした。

ひとりの少女・恵美子(市川由衣)が、洋(池松壮亮)に恋をし、大人の女へと成長していく。でも、男と女を描く脚本家の名手・荒井晴彦が紡ぎ出した脚本は、ただの青春映画という枠には収まらず、原作が持つ70年代ならではの時代が放つ熱を帯びた、重厚なドラマとなった。メガホンをとったのは『僕は妹に恋をする』(07)の安藤尋監督だ。

市川は、相手役の池松には、心から感謝しているようだ。「活字で読んだだけの洋は、本当にひどい男だなと思いました。でも、恵美子は惹かれ、依存してしまう。池松さんが演じた洋を見て、その理由がわかりました。とても孤独な感じがしたし、母性をかきたてられましたし、すごく色気もあって素敵でした」。

池松も市川の熱演に賛辞を惜しまない。「市川さん自身がもっている母性とか少女性が、日に日に恵美子を凌駕していくんです。その様が面白くて。僕こそ、本当に助けてもらいました」。

現場での手応えについて尋ねると、市川は「特になかったです。ただ、恵美子としていることでしかなかったので」と、無我夢中であったことを告白。「撮影中は1日も休みがなくて、撮影三昧でした。だから、余計なことを考える時間もなかったけど、それで良いと思っていました。今回は作品に身を投げようと思っていたので。でも、年末の30日まで撮影をしていて、終わった後、倒れました。正月はずっと寝正月でした(苦笑)」。

ラストは植物園のシーンだったが、そこですでにふらふらしていたという市川。池松も「ギリギリでしたね。そりゃ、あれだけ身を削っていれば、倒れますよ」と、彼女に優しい目線を投げる。市川は「自分としてはそこまで思っていなかったというか、プレッシャーを感じてやっているという感覚は持ってなかったのですが、体は正直でした。でも、それで良かったんです」とやり切った感を見せる。

池松は「市川さんは素晴らしかったです」と饒舌にほめる。「まず、よくこんな役を受けたなあというところから入り、すごく短い間ですが、市川さんを見ていろいろと思うところがありました。もちろん、僕は市川さんを1%もわかったつもりはないのですが、すごく心がきれいな人だなと思いました。真っ直ぐで、全然飾ってないんですよ。それが昔からこうなのか、今の市川さんがこうなのかはわからないけど、僕は今の市川さんにすごく魅力を感じまし」た。

市川も「ある意味、この作品をやるってところで何かが吹っ切れた感じがします」と言う。「もともと、あまり壁がないねとは言われますが。芸能界へ入って14、5年経ちますが、あまり業界には友達もいないですし。地元の友達とよく遊ぶというか、感覚が普通の人といる方が好きなんです。あまり自分が女優よ!みたいなことはしたくないですね」。

市川は演じた恵美子について「痛い女だなって最初は思っていたんですが、その痛さが、純粋さゆえの痛さで、そこに魅力を感じました。ぶれない恵美子は、女だけど男らしい。負けているようで全然負けてない。私はとても共感できた役柄です」と力強く語る。池松も「簡単にいえば、男と女の話、つまり人対人の話なんですが、そこの見つめ方がとても面白い。僕は、この映画が本当に大好きです」とアピール。

市川由衣、池松壮亮が、男と女の愛に真摯に向き合った意欲作『海を感じる時』。見終わった後に深い余韻が残る、“本当”のラブストーリーだ。【取材・文/山崎伸子】

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